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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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若紫③明石入道

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富士山  噴火する富士山
幼い頃から『源氏物語』(1000年頃完成)に憧れていた菅原孝標女(1008~59年)が、『更級日記』の中で、上総の国(千葉県)から帰京する際、富士山の麓を通った時のことを記述している。
「頂のすこし平ぎたるより煙は立ち上る。夕暮れは火の燃え立つも見ゆ」
当時、富士山は活火山だった。


明石の浦  明石の浦
右大臣家(弘徽殿大后)との政争に敗れた光源氏は、一時期、須磨と明石に退去、不遇をかこっている。


「こんなに美しい所で暮らしている人々は、何も思い残すことはないだろう」

「いえいえ、洛北以上に風光明媚な場所など地方にはたくさんございます。源氏の君も、各地の山や海の景色を御覧になられたら如何でしょう。気晴らしにもなりますし、絵もますます上達されましょう。富士の山とか○○嶽とか……」

また、別の従者は、

「西国の陽光あふれる浦々や、海辺の美しい景色も見逃せません。近い所では、播磨国(兵庫県)の明石の浦が一見の価値があります」

これといって、格別の見所があるわけではありません。

「ただ広々とした海原を見渡していると、他の場所とちがって、不思議なほどゆったりとして穏やかな気分に包まれます」

ここで、その従者は話題の目先を変えた。

のちに源氏の義父となる明石入道が登場する。

「前の播磨の守は出家して入道となりましたが、(のちの明石の方)をひとり、大切に育てております」

その住まいが、目を見張るほどの豪邸なのです。

入道は大臣家の血を引いていて宮廷においても出世できたのですが、たいそうな偏屈者で、人付き合いを嫌い、『近衛の中将』の官職を自ら捨て、『播磨の守』を望みました」

しかし、その余りの偏屈ぶりが播磨の国の人々にも侮られたようです。

「それで、『何の面目あって、都に戻られよう』と、剃髪してしまいました。だからといって、奥深い山に入って隠遁生活を送るわけでもなく、海辺で豪勢に暮らしおります」

出家の身で、贅沢な暮らしにこだわるなどもっての外です。





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若紫④落魄の身

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源氏物語の里 『源氏物語の里』 

 兵庫県明石市大観町10-11

蔦の細道 『蔦の細道 (恋の通い路)』 光源氏が、明石の方の住む「岡部の館」を訪れるために通った道 昨年の晩秋、光源氏になったつもりで、「蔦の細道」を歩いてみました。しかし、平成の明石の方に出会うこともなく、10~15mほどで空しく「恋の通い路」は終わりました。


出家の身で、贅沢な暮らしにこだわるなどもっての外です。

「ただ、若い妻子のために一人だけ山にこもって仏道修行するわけにもいかないという事情があるのかも知れません」

先日、播磨へ下向した折、入道を訪ねました。

「都ではくすぶっていましたが、播磨では広大な土地と豪邸を所有しており、豊かな余生を送るための財産も十分のようです。国司の地位を利用して蓄えた資産でしょう。来世のための勤行も怠りなく、出家して品格が上がったように見受けられました」

従者入道について縷々述べたか、源氏の関心は、

「ところで、そのとは」

入道にはとんと関心がないようだ。

「器量も気立ても悪くありません。代々の国司が求婚しているようですが、入道は取り合わないそうです」

そして、常々に言い聞かせております。

「『私が落ちぶれたので、一人娘のお前には都の上流貴族に嫁いでもらいたい。もし、私の死後、それが叶わなかったら、海に身を投げなさい』」

自ら望んだことだが、しかもあり余るほどの財を築いたが、入道は地方官であることが不本意だったようだ。

源氏は、面白く聞いていた。

従者たちは、笑い合っている。

「海龍王の后にでもしたいくらいの、自慢の娘というわけか」
  ・海龍王……海中に住む竜神で海と雨の支配者

「高望みというか気位が高いというか、困ったものだね」

「美人といっても、どうせ田舎娘じゃないか。こんな辺鄙な所で、古臭い親に育てられたのでは……」

「いや、そうでもないようだ。母親は由緒ある家柄の出で、都の高貴な家々からきれいな若い女房や童女などを探し集めて、都風に世話をさせているらしい」

従者たちが好き勝手にしゃべっているところに、珍しく源氏が割り込んだ。

入道はどうして、に、『海に身を投げろ』とまで思い込んでいるのだろうか。気味が悪くないか」





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若紫⑤若紫デビュー

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六条御息所 物の怪(六条御息所の生霊)

小柴垣 小柴垣 (こしばがき)


入道はなぜ、に、『上流に入れなかったら、海に身を投げろ』というほど思い詰めているのだろうか。気味が悪くないか」


「そろそろ、日が暮れかかってまいりました。発作は、お起こりにならないようです。早く二条院へ……」

従者の言葉を、行者が制した。

「御病気のほかに、物の怪も憑いております。今夜はこちらで静かに加持祈祷などをして、明日の朝にでもお帰り下さい」

源氏は、山寺の宿坊での旅寝に興味があり、

「それでは、明朝、山を下りよう」

惟光だけを残して、他の従者はみんな都へ帰した。


春の日は長く、暮れるまでにはまだ時間がある。

源氏惟光は、春霞に紛れて小柴垣の辺りへ出かけた。

さっき、女たちがたくさん庭へ出てきた家である。

小柴垣からのぞくと、西側の部屋で尼君がお勤めをしている。

病身らしく弱々しげに読経している尼君は四十過ぎに見え、痩せてはいるが頬はふくよかで目もとは涼やか。

見るからに、相当の身分のようだ。

尼そぎの髪が、きれいに切り揃えられている。

源氏は、感じいった。

「長い髪よりも、斬新で好ましい」  当時、長い髪は美人の条件

尼君のそばに、小ざっぱりとした女房がふたり座っている。

ほかに、女童(めのわらわ 少女)が数人、家から庭へ出たり入ったりして遊んでいる。

そのうち、白い袿(うちぎ)の上に山吹襲の着馴らしたのを重ねた十歳ほどの少女が、こちらへ駆けてきた。

一緒に遊んでいる他の少女たちとは、まるで違っている。

「成人した暁には、どれほどの名花になるか」と思わせるほど可愛らしい顔立ちだ。





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若紫⑥尼君の心配

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若紫の系図← クリック 拡大 

若紫(紫の上) 光源氏 藤壺 兵部卿宮 尼君 僧都

若紫
伝・土佐光起筆 『源氏物語画帖 (若紫)』  … … …
飼っていた雀の子を逃がしてしまった若紫と、柴垣から隙見する源氏


「成人した暁には、どれほどの名花になるか」と思わせる可愛らしい顔立ちだ。

黒髪は扇を広げたようにゆらゆらと靡いて、泣き顔は手でこすって赤くなっている。

「どうしたの。友達とけんかでもしたの」

尼君が尋ねると、少女は泣きながら、

「雀の子を、犬君(いぬき:女童)が逃がしたの。伏籠(ふせご)の中に閉じ籠めておいたのに」

ふたりの面差しは、どこか似ている。

源氏は、「少女は、尼君の娘なのだろう」と思った。


ひとりの女房が立ち上がって、庭の方に向かった。

「うっかり者(犬君)がまたまた失敗をやらかして姫君を困らせるとは。雀の子は、どこへ行ったのかしら。折角なついていたのに。烏などに見つかったら大変だわ」

髪はゆったりと長く、見目麗しい女のようである。

少納言の乳母」と呼ばれているから、少女の乳母(めのと)なのだろう。


尼君が、少女の幼さを嘆いている。

「いつまでも子供っぽいわね。わたしが今日明日とも知れぬ身なのに、そんなに雀の子が大事なの。生き物を飼うのは罪作りなことだと、いつも言って聞かせているでしょう」

「もっと近くへ、おいで」

少女は、尼君の前に畏まって座った。

顔立ちがとても優美で、眉のあたりがほんのりと匂い、子供っぽく手で髪を掻き上げた額つきや髪の生え際がこの上なくかわいらしい。

あどけなさの中に、すでに天稟の美しさをのぞかせている。

「行く末が楽しみな美少女だ」

源氏少女に見とれているうちに、思わず涙をこぼした。

似ている、

「限りなう心を尽くしきこゆる人」にあまりにも似ている。





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若紫⑦初草の生ひゆく末

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鞍馬寺 鞍馬寺の説明板
鞍馬寺が『源氏物語(若紫の巻)』にでてくる「北山のなにがし寺」の候補地であることを記している。最後に、岩倉の大雲寺(紫式部の曽祖父・藤原文範創建)も候補の一つであることを書き添えている。

小袿  小袿 (こうちぎ) 
貴族階級の女子が着用した



「*限りなう心を尽くしきこゆる人」にあまりにも似ている。
 * 限りなく思いを寄せている方(藤壺)

尼君が、少女の髪をかき撫でながら泣いている。

「あなたは髪を梳くのを嫌がるけど、見事な髪だこと。

あなたの子供っぽいところが、心配でなりません。亡くなった母君は十歳ほどで父君に先立たれたけれど、その時分にはちゃんと物の道理をわきまえていましたよ。

それなのに、もし今わたしが死んでしまったら、あなたはどうやって暮らしていくの」


○ 生ひ立たむ ありかも知らぬ 若草を 

      後らす露ぞ 消えむ空なき

これからどこでどう育って行くのか分からない若草のようなあなたを残して、露のようにはかないわたしは死ぬに死ねません

そばにいた女房が、「本当に」ともらい泣きして、

 
○ 初草の 生ひゆく末も 知らぬ間に 

      いかでか露の 消えむとすらむ

初草のように幼い姫君のご成長をご覧にならないうちにどうして尼君様は先立たれるようなことをお考えになるのでしょう


そこへ、僧都がやって来た。

「ここは人目につきます。源氏の君が、瘧病(わらわやみ)の治療のために来ておられるそうです。たった今、聞きました。お忍びだそうで、まだお見舞いにも上がっておりません」

尼君は、あわてて簾(すだれ)を下ろした。

「まあ大変。こんな見苦しい様子を、だれかに見られたのでしょうか」

「世間で評判の源氏の君を、この機会に拝まれてはいかがですか。私のように世を捨てた法師さえ、世俗の憂さを忘れ寿命が延びるような気分になるお姿だそうです。

これから、私はご挨拶に参ります」

僧都が立ち上がったので、源氏は小柴垣を離れた。





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欧米の一部のメディアは、三人衆の登場以来、NHKを『あべテレビ』と呼んでいるそうです。




右翼であればだれでもいい安倍人事が続けば、ますます国際社会から見放されるでしょう。反発したり呆れたりしているのは、「言いつけ外交」の中国と韓国だけではないのです。

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若紫⑧北山の僧都

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桐壺の更衣....桐壺の更衣..宇治市源氏物語ミュージアム
光源氏の愛情生活の中心には幼くして亡くした母・桐壺の更衣の存在があり、あくなき女性遍歴は母の面影を追う「母恋しの旅」にほかならない。

母の面影の直系が、母に生き写しと聞かされてきた藤壺であり、藤壺と瓜二つの若紫である。この叔母と姪にあたる二人が、源氏にとって「永遠の女性」であり「最愛の妻」とされる。

遣水..遣水.伏見・城南宮で曲水の宴


僧都が立ち上がったので、源氏は小柴垣を離れた。


宿坊に戻っても、源氏少女のことが気になっている。

「あの少女は一体だれなのか。藤壺様の代わりに毎日ながめていたいものだ」

しばらくすると、僧都の弟子僧都からの言伝を惟光につたえている声が聞こえてきた。

源氏の君が鞍馬においでになっていることを、たった今お聞き致しました。

すぐにご挨拶に伺うべきところですが....拙僧がこの寺におりますことをご存知でありながら、お忍びでいらしていることをお恨みに存じます。

旅のお宿も、拙僧の宿坊でご用意致しましたものを」


弟子と入れ代わるように、僧都がやってきた。

気さくだが重厚な人柄で、世間の人々から信頼されている。

源氏は、自分が軽々しい服装であることがきまり悪かった。

「数日前から、瘧病(わらわやみ)を患っております。人の勧めに従って、急きょ、こちらの行者殿の加持祈祷を受けるために訪ねて参りました。

高名な行者殿の加持祈祷がもし効き目がなかったら、世間体が悪かろうと内密に参ったのです。

すぐに、貴僧のところへ伺います」


僧都は、鞍馬山に籠って以来の修行ぶりをひとくさり話すと、熱心に誘った。

「こちらと同じような草庵ですが、涼しい遣水の流れをお目にかけとうございます」

さきほど、僧都尼君ら自分を知らない人々に、「世俗の憂さを忘れる」だの、「寿命が延びるような気分になる容姿」だのと吹聴していたので気恥ずかしいが、藤壺そっくりの少女のことが気になって出かけた。





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若紫⑨少女の身元

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光源氏と惟光....光源氏と惟光(これみつ)
2008年 たけふ菊人形展:源氏物語絵巻

篝火....篝(かがり)火


源氏僧都の草庵についたころ、月は雲に隠れていた。

遣水(やりみず)のほとりには篝火がともされ、灯籠(とうろう)には火がいれてある。

ほどよく配置された草木には細やかな心遣いが行き届いていて、えもいわれぬ趣がある。

南がわの部屋を、源氏をもてなす座敷として用意してあった。

部屋には薫物(たきもの)がほのかに漂い、仏前の名香(みょうごう)の香も室内にみちている。


僧都は、源氏に、この世が無常であることや、来世の話などを説いて聞かせた。

源氏は自分の罪障の深さが恐ろしいが、それでも藤壺への思いはあきらめきれない。

「生きている限り、秘密の恋に苦しみ悩み続けなければならないだろう。まして、来世はどんな劫罰(ごうばつ)をこうむることやら」

いっそう出家して、どこかの山にこもって隠遁生活を送るのがいいのではないかとも思う。

しかし、すぐにそうした考えを打ち消すように、少女の面影が心にかかってきた。


僧都にたずねた。

「こちらにお泊まりになっている方は、どなたですか」

「お知りになったら、がっかりされましょう。故・按察使(あぜちの)大納言は亡くなってから久しいので、ご存知ないでしょう。

その北の方が、拙僧でございます。の死後出家しましたが、このところ病気がちで、都に戻らず山籠りしているを頼っているのでございます」

「故・按察使大納言には、ご息女がおいでになると伺っておりましたが」

源氏が、当て推量にたずねると、

が一人おりました。亡くなって十年あまりになりましょうか。故・大納言は入内させようと大切に育てていましたが、その願いがかなわぬうちに亡くなってしまいました。

その後、が一人で苦労して育てておりましたが、だれが手引をしたものか、兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや)がひそかに通われるようになりました。

しかし、北の方が身分の高い人できしょうが激しく、はなにかと気苦労が多く、明け暮れ思い悩んでいたようです。

それがもとで病気になり、をひとり残して亡くなってしまいました」

それで、源氏は、「少女はその人のなのだ」と理解した。

兵部卿宮のお血筋(娘)なので、藤壺様とそっくりなのだ」

兵部卿宮藤壺は兄妹である。





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若紫⑩「理想の女」の素材

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若紫の系図若紫(紫の上)の系図
若紫(紫の上) 光源氏 藤壺 兵部卿宮 尼君 僧都

二条院跡候補地(陽成院跡)二条院跡候補地(陽成院跡)二条院…光源氏の母・桐壺更衣の実家を、桐壺帝が増改築した


兵部卿宮のお血筋()なので、藤壺様とそっくりなのだ」

兵部卿宮藤壺は兄妹である。

ということは、あのいたいけな十歳ほどの少女は、源氏の脳裏を片時も離れることのない藤壺の姪ということになる。


源氏少女を身近に感じて、ますます愛おしくなった。

人柄は上品そうで可愛らしく、素直で小賢しいところは少しもない。

「一緒に暮らして、自分の理想通りに育ててみたい」

源氏は、かねてから望んでいた「理想の女」の素材に出会えたのだ。


少女の身の上をもっと知りたくて、僧都にたずねる。

「それは、お気の毒なことでしたね。その方には、忘れ形見はいらっしゃらなかったのですか」

「亡くなる頃、女の子が生れました。老いさき短い妹(尼君)は、『その孫娘が心配の種』と思い悩んでおります」

源氏は思い当たることがあって、

「唐突な話に聞こえるかもしれませんが、その幼い方の後見人としてをお考え下さるよう、尼君にお話し願えませんでしょうか。

本妻(葵の上)はおりますが、初めからしっくりいかず、ほとんど独り暮らしをしております」


「大変うれしいお言葉ですが、あのはまだ幼稚です。後見して頂くにしても早すぎます。

もっとも、女というものは、だれかに世話をしてもらって一人前になるもの。と相談して、からお返事を差し上げます」

そう応える僧都の言葉のトーンが急によそよそしくなり、表情が硬くなった。

源氏は恥ずかしくなり、話を続けられなくなった。

当時の源氏は、今でいうなら高校三年生の18歳。





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若紫⑪艶っぽい歌

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鞍馬の火祭へ← クリック 拡大
『鞍馬の火祭』毎年10月22日

鞍馬の火祭鞍馬の火祭


その頃、源氏は今でいえば高校三年の18歳。


僧都は、ゆっくり立ち上がった。

「阿弥陀堂で、初夜(そや*午後8時頃に行う勤行)のお勤めをして参ります」

僧都が部屋を出て行くと、源氏は部屋の外に立て巡らしてある屏風を少し開けて、女房を呼び、尼君に和歌を届けてくれるよう頼んだ。

○初草の若葉の上を見つるより

…………旅寝の袖も露ぞかはかぬ

芽生え始めた初草のように若々しいお姿を拝見してからというもの、私の旅寝の袖は涙の露ですっかり濡れて乾くことがありません

尼君は、和歌に目を通して驚きあきれた。

なんと、熱烈なラブレターである。

「まあ、艶っぽいお歌だこと。あの子をいったい幾つと思っていらっしゃるのでしょう。

また、わたしが以前、『生ひ立たむ ありかも知らぬ 若草を 後らす露ぞ 消えむ空なき』と詠んだ歌を、どうしてご存知なのかしら」

………………若紫⑦初草の生ひゆく末 参照

困惑したが、遅くなっては失礼になると思ってすぐに返歌した。

源氏の「求愛」の部分にはあえて触れず、「悲しみに涙を流す」という点だけを詠んで、源氏自分たちとの境遇の違いを示した。

○枕ゆふ今宵ばかりの露けさを

…………深山の苔にくらべざらなん

(あなた様の)たった一夜の旅寝の寂しさがもよおす涙は、山奥で日夜わびしく暮らしている私たちの涙とは比べものになりません


尼君様、恐れいりますが、幼い方のことでご相談したいことがございます」





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………………鞍馬の火祭
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若紫⑫似た境遇

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義経公供養塔『義経公供養塔』in鞍馬寺

涙の滝『涙の滝』*義経公供養塔の下


尼君、恐れいりますが、幼い方のことでご相談したいことがございます」

あの子のことで、なにかお聞き違いをなさっているのではないでしょうか。あの子はまだ十歳です。源氏の君ほどの方に、お返事のしようがありません」

「突然の申し出で、軽薄な男とお思いかもしれませんが、決して浮わついた気持ちからではありません。み仏もきっと御覧になっていると思います。

姫君は、お気の毒な身の上と伺いました。亡くなられた母君の代わりとして、をお考え頂けないでしょうか。

わたしも幼いころに祖母に先立たれ、頼りない思いで日々暮らしてきました。

姫君も同じような境遇でいらっしゃるようなので、お仲間にして頂きたいのです。

このような機会はまたとございませんので、尼君がどうお思いになられるかも考えないで、思いきってお話ししました」

尼君はまだ、心を許していない。

そこへ僧都が戻ってきたので、その話は沙汰止みになった。


都からお迎えの人々がやってきて、源氏の病気平癒を祝った。

僧都は、都では見られないような珍しい山の珍味を、谷の底へおりて採ってきた。

別れの盃を源氏に差し上げながら、

「今年いっぱい山ごもりすると誓いを立てておりますので、都までお見送りにいけません」

源氏は軽く手を振り、

「こちらの山や谷川に心惹かれますが、にご心配をかけるのも恐れ多いので下山いたします。

桜の盛りが過ぎないうちに、また参ります」


○宮人に行きて語らむ山桜

…………風よりさきに来ても見るべく

都にもどったら大宮人に聞かせましょう、この山桜の美しさを。桜の花を吹き散らす風より前に来て見るようにと

源氏の姿や声が、眩しいくらいに美しい。





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30歳以上の「大人AKB」に5066人もの応募があったそうです。
最高齢は82歳のお嬢さん。
妻にはなってみたものの母にもなってみたものの、何か大事な忘れ物をしているという感覚だろか。
大人AKB」に選ばれたのは、2児の母親で37歳の専業主婦・塚本まり子さん。

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若紫⑬花見酒

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優曇華*優曇華(うどんげクワ科の常緑高木)

鷲宮催馬楽神楽*鷲宮催馬楽神楽国指定重要無形民族文化財
鷲宮(わしのみや)神社、埼玉県久喜市鷲宮/一説では関東最古の大社


源氏の姿や声が、まぶしいくらいに美しい。

僧都の返歌。

○優曇華の花待ち得たる心地して

…………深山桜に目こそ移らね

源氏の君を拝見するのは 三千年に一度咲くという優曇華の花が咲くのを待ちつづけやっと目にしたようなうれしさです。深山桜などには、目移りしません


源氏は、姫君への手紙を僧都に仕えるにことづけた。

○夕まぐれほのかに花の色を見て

…………今朝は霞の立ちぞわづらふ

昨日の夕暮れどき、花のようにはかなげな可愛い人を見たので、今朝は霞のように立ち去りがたい思いがしております

返歌は尼君から。

○まことにや花のあたりは立ち憂きと

…………霞むる空の気色をも見む

花の辺りを立ち去り難いとは本当のことでしょうか。霞んだ空のような本心を見たいものです


源氏が牛車に乗ろうとするところへ、左大臣家から迎えの者らが大勢やってきた。

「行く先も告げずに出かけられたので、心配しました」

仲の良い頭中将左中弁もいる。

頭中将は、

「こんな旅のお供なら喜んでさせて頂きたい。誘って下さらないとはあんまりですぞ」

そう恨みごとを述べると、

「みごとに咲き誇っている山桜を楽しまずに都へ引き返すのは、もったいない。花見酒をしましょう」


岩蔭の苔の上に並んで座って、盃をまわした。

流れ落ちてくる水のしぶきなど、風情のある滝のほとり。

頭中将は懐にもっていた横笛を取り出して、吹き澄ました。

弁の君は扇を軽く打ち鳴らして、「豊浦の寺の、西なるや」と催馬楽(さいばら)を謡う。

ふたりとも人並みはずれた容姿のもちぬしだが、源氏がけだるそうに岩に寄り掛かっている姿は、ぞっとするほど麗しい。




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若紫⑭源氏、宮中へ

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内裏平安京内裏(だいり)
*北半分はハーレム*右上に「桐壷」がある

紫宸殿
*紫宸殿(ししんでん*内裏の正殿)


ふたりとも人並みはずれた容姿のもちぬしだが、源氏がけだるそうに岩に寄り掛かっている姿は、ぞっとするほど麗しい。

紫式部は、「源氏がいかに美貌で、魅力的な男であるか」ということを様々な場面で具体的に描写する。

一方、これは『平家物語』と共通することだが、女の美点を描く場合はあっさりとして抽象的だ。

「美しい」「かわいい」「教養が深い」「高貴だ」など、通り一遍の言葉で片付ける。

気持ちが入っていない。

『平家物語』の作者(吉田兼好の『徒然草』によると信濃前司行長)は男だから不思議な気がするが、行長は男色家だったともいわれている。

ちなみに『平家物語』きっての美男子、平維盛(これもり*清盛の嫡孫)の男ぶりは、「光源氏の再来」とされた。


源氏一行がいよいよ下山するとき、下級の法師にいたるまで名残り惜しさに涙を落としていた。

尼君をふくめて女たち源氏ほどの男をそれまで見たことがないので、「この世の人とは思えない」などと噂しあっている。

僧都は、目を拭っている。

「どんな因縁で、源氏の君のような方が、こんな末法の世にお生まれになったのだろう。悲しいことだ」

姫君も、子供心にあこがれている。

父宮よりも、ずっとキレイだわ」

女房が、からかう。

「それでは、源氏の君のお子様になられませ」

すると、うれしそうに小さくこっくりと頷いた。

お人形遊びをするときもお絵描きをする時も、「これは源氏の君よ」といって、一番きれいな衣装を着せて大事にしている。


源氏は帰京するとまず宮中に参内して、鞍馬での出来事を桐壷帝に報告した。





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若紫⑮気まずい夫婦仲

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光源氏と頭中将の系図


御帳台.御帳台(みちょだい)


源氏は帰京するとまず宮中に参内して、鞍馬での出来事を桐壷帝に報告した。

は、病み上がりの息子の様子をみて、

「やつれたのではないか」

ちょうど居合わせていた左大臣

「私どもの邸で1、2日ゆっくりお休みなさいませ。今からお供いたしましょう」

源氏は気が進まないが、義父である左大臣の情にほだされて一緒に内裏を退出した。

左大臣は自分の牛車の上席に源氏を乗せ、自身は末席に座った。

義父がいろいろと気を使ってくれることを源氏はかねてから気の毒で心苦しく思っている。

夫婦仲がうまくいっていないからだ。


左大臣邸は、源氏がいつ訪れてもいいように磨き上げられ飾り立てられていた。

しかし源氏が邸内にはいっても、正妻の葵の上はいつものことだが奥にこもったまま。

父親に強く促されて、やっとその端正な姿を見せた。

物語のなかのお姫様のように美しく理知的な葵の上は、夫である源氏と目を合わすことも挨拶をすることもない。

身じろぎもせず、行儀よく座っている。

気詰まりな空気のなか、源氏が声をかけた。

「すこしは世間の妻たちのようなやさしい心遣いを見せてほしいものです。私がひどい病気に苦しんでいたのに、『お加減は如何ですか』とさえ尋ねて下さらない。やはり寂しいものです」


夜になって源氏が御帳台の中へはいっても、葵の上は入ろうとしない。





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若紫⑯惟光を鞍馬へ

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太政官制太政官制
太政大臣は常設ではなく、しかも名誉職的な色彩が強い。
通常は左大臣(関白を兼任することも)が最高位であり、今でいう内閣総理大臣にあたる。
ただし、『源氏物語』においては、源氏の義父の左大臣ではなく、東宮(のちの朱雀帝)の「外祖父」である右大臣が実権を握っている。


主要登場人物
光源氏 葵の上 左大臣 弘徽殿女御 桐壺帝 四の君 右大臣


夜になって源氏が御帳台の中へはいっても、葵の上は入ろうとしない。

家の繁栄のためにも孫がほしい左大臣の期待に背くことになるが、源氏は今ここで強く誘う気にはならない。

源氏が12歳、葵の上が16歳のときに結婚した夜の床入りから、しっくりいかなかった。


男が12歳で女が16歳というのは人としての成熟度にかなりの開きがあると思うが、当時はどうだったのだろう。

逆に、女が12で男が16ならば、なんとかバランスはとれそうな気がする。

あるいは、10年後の、22と26であればいたって自然だろう。

それくらいの「姉さん女房」は幾らでもいるのではないか。

とにかく、平安期は男が12で女が16ほどのカップルは珍しいことではなかったようだ。

特に貴族階級はほとんどが政略結婚だから、年齢なんかに構っていられなかった。

その場合、夜の営みのことは女房が前もって姫君に手ほどきをしたそうだ。

そして当夜、花嫁が年下の男の子をリードしたらしい。

増殖中らしい草食系男子にとってはユートピアかもしれない。

こう書いてくると、源氏葵の上がぎくしゃくしている理由が十代における年の差にあったように聞こえるかもしれないが、主な原因はそこではなかった。

主因を考える際のヒントになる話が、さっそく次に展開する。


源氏はいつしか鞍馬の若草のような姫君のことを考えはじめている。

藤壺様そっくりの姫君をぜひとも二条院に引き取って、心の慰めにしたい」

翌日、源氏僧都尼君に手紙を書いた。

尼君への和歌。

○面影は.....身をも離れず.....山桜

  .....心の限り.....とめて来しかど

山桜のように美しいあなた(姫君)の面影がわたしの身から離れません。心のすべてをそちらに置いて来たのですが

尼君からの返歌。

○嵐吹く.....尾の上の桜.....散らぬ間を

 ..... 心とめける.....ほどのはかなさ

激しい嵐が吹いてやがては散る峰の桜の咲いている間だけ、お心を寄せられたのでは


僧都からの返事も似たような文面なので、源氏は残念に思って、2、3日後に惟光(これみつ)を鞍馬に遣わした。





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若紫⑰源氏、藤壷の御帳台へ

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内裏平安京内裏(だいり)
北半分はハーレム*左中央に「藤壷」がある


若紫の系図


僧都からの返事も似たような文面なので、源氏は残念に思って、2、3日後に惟光(これみつ)を鞍馬に遣わした。

「鞍馬に少納言の乳母(めのと)という女房がいる。会って、私のありのままの気持ちを伝えてくれ」

惟光は鞍馬につくと乳母に面会を申し入れ、源氏姫君への思いをつぶさに話した。

尼君様は、ご病気が快復したら都へ戻られます。その上で、お返事を差し上げます」

源氏は、その日のことを不安に思いながらも心待ちにした。


そのころ、「藤壺の宮の病状が重く、里下り(実家に戻ること)されている」という噂が流れた。

どうやら本当らしい。

源氏は、桐壺帝藤壺の体の具合を心配して憔悴しきっている様子が気の毒で痛々しかったが、心の中では別のことを考えていた。

「この機会を逃したら、2度と二人きりで藤壺様と会えないだろう」

源氏は乳母の王命婦(おうみょうぶ)に幾度となく手引きを頼むが、王命婦にしてみれば有り得べからざることだ。

息子が、父親の妻と姦通することはまさに畜生道。

しかし、ある日、ついに王命婦が根負けして、源氏藤壺の御帳台(みちょうだい)へ案内した。

藤壺は病床に伏せていた。

4歳のときから母とも姉とも慕い、憧れていた藤壺である。

しかし、12歳になって元服すると突然会えなくなった。

それまでは、の計らいで例外的に藤壺の部屋に自由に出入りして楽しく遊んでいた。

だが、元服して葵の上と結婚したその日に、一人前の男になったという理由で、風にゆらぐ御簾(みす)が鋼鉄の扉になった。

藤壺の顔をみるのは、それ以来である。

読者は、そう思わされている。

恋焦がれてきた藤壺を目の当たりにして、源氏は切なさに胸がいっぱいになった。





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若紫⑱藤壺、懐妊

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御帳台 御帳台(みちょだい)

石山寺源氏の間執筆する紫式部
 「執筆する紫式部」 石山寺・源氏の間


恋焦がれてきた藤壺を目の当たりにして、源氏は切なさに胸を締め付けられた。

*作者はここで、読者が知らされていない事実を明かす

藤壺は、「かつての密通」を思い出すだけでも辛かった。

そのとき、藤壺はかたく心に誓った。

「これで、終わりにしなければ」

*紫式部は性愛の場面はほのめかす程度で、具体的な描写はしない。映画やドラマなどの映像作品でどうぞ。なお、和歌が795首ある

「ところが、またこのようなことに」

不意の出来事に藤壺は困惑したが、それでいて源氏を責めることはなく凛として奥床しい。

源氏

○見てもまた  逢ふ夜まれなる  夢のうちに

      やがて紛るる  我が身ともがな

ようやくお逢いできましたが再びお目にかかれる夜はこないでしょう。わたしは夢のなかに紛れてしまいとうございます

涙にむせんでいる源氏がかわいそうで、藤壺

○世語りに  人や伝へむ  たぐひなく

      憂き身を覚めぬ  夢になしても

後の世まで世間の語り草にされないかしら。この上なく辛いわたしの身の上を覚めることのない夢とみなしても


源氏は二条院にもどると、終日泣き伏した。

父の桐壷帝にあわせる顔がなくいやそれ以上に恐ろしくて内裏に参内せず、2、3日邸に籠っていた。

そのことかあって藤壺は病状が悪化したと思っていたが、何日か経ったころ、身体の変調が病気からくるものではないことに気がついた。

「この先、どうなることかしら」

藤壺は、つくづく浅ましく辛すぎる身の上を嘆く。


およそ3か月後、乳母の王命婦(おうみょうぶ)とという若い女房が、いつものように湯殿で藤壺の身体を洗っているときに気がついた。

里下りの時期からするとの皇子ではなく、源氏の子が藤壺のお腹に宿ったのだ。

事の重大さに、ふたりは震えた。

藤壺は身ごもったことを口外せず、悶々と悩みつづける。


7月に宮中に戻り「懐妊」したことをに報告するが、妊娠の兆候が遅れた理由を「物の怪」のせいにした。

は、「物の怪」を退散させるために大勢の僧侶たちを招いて加持祈祷をさせる。


貴族や女房らの多くは皇子(女)であることを疑わなかったが、藤壺のライバルであり先に桐壺の更衣をいじめ殺した弘徽殿女御の一派は納得していない。





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若紫⑲夢占い

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六条御息所の生霊物の怪(六条御息所の生霊)
人にとり憑いて苦しめたり病気にさせたり死に至らせたりする

加持祈祷 加持祈祷 (かじきとう)
 病気や災難を祓うために行う祈祷orその儀式


貴族や女房らの多くは皇子(女)であることを疑わなかったが、藤壺のライバルであり先に桐壺の更衣をいじめ殺した弘徽殿女御の一派は納得していない。


は懐妊を大いに喜んで、ますます藤壺を寵愛する。

藤壺は産まれてくる子を「不義の子」にしないことに成功したかに思えたが、やはり心中は穏やかではなく恐ろしかった。


源氏藤壺懐妊のウワサを耳にした夜、ただならぬ夢にうなされる。

「お腹の子が、自分の子かもしれない」と思ったわけではない。

だが、占い師を呼んで夢占いをさせると思いがけないことを告げられた。

「あなたさまはいずれ帝の父上になられます。すばらしく幸運な人生ですが、蹉跌をきたすこともございます。くれぐれもご用心ください」

藤壺のお腹の子の父親が自分であることを知って、源氏は腰が抜けるほど動転した

もし夢占いの「秘密」がや世間に知られたら……。

源氏藤壺がいかに最愛の息子でありであろうと、ただでは済むまい。

お腹の子はどうなる。

源氏占い師に、固く口止めした。

「わたしが見た夢ではない。ほかの方の夢だ。決して口外してはならぬ」


藤壺がいっそう愛おしくなって明るいうちは飛香舎(ひぎょうしゃ 藤壺の別名)を訪れ、暗くなると清涼殿に招いて寵愛した。

藤壺は身ごもっているせいで少しふっくらとしているが、その表情はどこかしら愁いを含んでいる。

は、そんな藤壺を慰めるために度々管弦の遊びを催した。

管弦の遊びにはいつも源氏を招いて、琴か笛を奏でさせた。

源氏は笛を吹いたり琴を弾いたりしながら、御簾の向こうでと寄り添っているだろう藤壺のことが気になって仕方がない。


晩秋の月明かりの夜。

宮中からの帰り、六条京極を通りかかったとき荒れ果てた屋敷がみえた。





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