Quantcast
Channel: 吉備路残照△古代ロマン
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1644

平家物語の群像 鬼界ヶ島②泣き叫ぶ俊寛

$
0
0

$吉備路残照△古代ロマン-赦免状  足摺をして泣き叫ぶ俊寛

礼紙(らいし:包み紙)に書いてあるに違いないと思って礼紙を見るが、やはり「俊寛」の文字はない。

そんなはずはない、何かの間違いだろう。

赦免状の初めから終わりへ、終わりから初めへと何度もなんども読みなおすが、二人とあって三人とは書かれていない。
 

そうしているうちに、成経と康頼が熊野詣でから戻ってきた。

成経が赦免状を読んでも、康頼が目を通しても「俊寛」の二文字はない。

夢かと思おうとしても、これは紛れもない現実だ。

「三人は同罪で、流刑地も同じ。どうして二人は呼び戻され、私一人だけが残されるのか。清盛殿が忘れなさったか。書記の誤りか」


いよいよ船を出そうとすると、俊寛は船に乗っては降り、降りては乗った。

何度もなんども乗り降りを繰り返すが、やはり諦めきれない。


ともづなを解いて船を海へ押し出すと、今度は綱にしがみついた。

海水に腰までつかり、脇までつかり、やっと背が立つところまで引かれていった。

背が立たなくなると、今度は船にしがみついた。

「あなた方、俊寛を捨てるのか。これほど薄情とは思わなかった。せめて九州の地まで乗せて行ってくれ」

必死の形相で、訴える。


だが、使者の基康は、「清盛様の御命令です。お気の毒ですが、お乗せするわけにはいきません」

しがみついている俊寛の左右の手を、船から引き離した。

 
俊寛は波打ち際に倒れ伏し、幼児が母親を慕って泣きじゃくるように足をばたばたさせて、わめき叫んだ。

「お~い、乗せて行ってくれ~、連れて行ってくれ~」

宮尾本 平家物語〈1〉青龍之巻 (文春文庫)/宮尾 登美子

¥860
Amazon.co.jp

平家物語 (岩波新書)/石母田 正

¥798
Amazon.co.jp

南九州・奄美 (JTBのポケットガイド)/著者不明

¥945
Amazon.co.jp


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1644

Trending Articles