大池から眺める薬師寺
左から 金堂 西塔 東塔
『東塔』は、薬師寺伽藍唯一の創建時の遺構
奈良市西ノ京にある法相宗の大本山。
南都七大寺の一つ。
天武9(680) 年、天武天皇が皇后(のちの持統天皇)の
病気平癒を祈念して、高市郡岡本(藤原京)
に創建した(現在の本薬師寺跡)。
養老2 (718) 年、平城京造営に伴い現在地に移転。
途中で夕食をとり、完成直後の新金堂で白鳳の傑作、
『阿弥陀如来像』と『日光菩薩像』、『月光菩薩像』を見上げたのは、
すでに堂塔が深い闇に閉ざされようとする時分であった。
大池から眺める、『東塔』の驚嘆すべき古代美。
1200年間もの長い間、法隆寺・夢殿の秘仏『救世観音』
を包んでいた布をはぎとったアメリカ人・フェノロサは、
この『東塔』を、「凍れる音楽」と形容した。
その九輪の頂にそびえる水煙のシルエットが、
心なしか愁いを帯びていた。
ところで、当日が新金堂の「落慶法要式」であることを
迂闊にも知らなかった。
すぐに宿坊に電話して、門を閉めないように頼んだ。
儀式は深夜、古式ゆかしく厳かに執り行われた。
堂内に流れる荘重な読経の調べと、流麗な曲線を描く
三体の尊像が渾然と奏でるメロディーは、さながら浄土
はかくやと思わせるものであった。
午前一時近く、かりそめの法悦と抗しがたい睡魔とともに
式の途中、新金堂を抜け出した。
奈良盆地の冬は厳しい。
荒涼とした広い境内には、木枯らしが音を立てて
吹き荒れている。
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