明石の浦
貴族らの訴えを聞いて驚いた鳥羽上皇、忠盛を呼んで問いただした。
忠盛は、明快に申し開きをする。
「家臣が庭に控えていたことは存じませんでした。悪巧みをする人々がいることを耳にした家臣が、私の身を案じて秘かに来ていたのであれば、それは私にはどうすることもできません。それでも罪がありますのなら、家臣を差し出しましょう」。
さりげなく、貴族らの陰謀を織り込んでいる。
「次に刀のことですが、女官に預けてあります。刀をお調べの上で、処置をお願い致します」
刀を持ってこさせて吟味すると、刀身は銀箔を押し付けただけの木刀。
上皇は、あとで訴えられることを想定して木刀を用意していた周到さは見事であると賛嘆した。
家貞の行動についても、「武家の慣わしであろう」と罪には問わなかった。
上皇は、かえって忠盛の洞察力と計画性をほめたたえ、忠盛は面目を施した。
また、忠盛は無骨なだけの武人ではなく、風流を解する歌人でもある。
任地の備前の国から都にのぼってきたとき、上皇に、「明石の浦はどんな様子であったか」と尋られたときに詠んだ和歌。
○有明の 月も明石の 浦風に 波ばかりこそ よると見えしか
有明の月の光も明るい明石の浦は、潮風に吹かれて波ばかりが 〇 打ち寄せ、そこだけ夜に見えたことです
上皇は感心して、金葉集に収録した。(完) 次回から平清盛
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