大伯:大来皇女(おおくのひめみこ)
史実としての初代斎宮 父は天武天皇 同母弟に大津皇子
嵐山~嵯峨野
都から嵯峨野への叙情的な道行は、「平家物語」にもしばしば登場する
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
その頃、父の桐壷院が重病というほどではないが、体調を崩した。
源氏は心身ともに余裕がなくなったが、「薄情な男と思われるのは心外」だから、何とかやり繰りして、野の宮の六条御息所を訪ねることにした。
さっそく、従者に手紙をもたせた。
九月七日の頃で、斎宮と御息所が伊勢へ下るまぎわである。
御息所は、「会えば未練がつのって苦しくなる。もう会いたくない」と心に決めているが、「立ち話でいいから、お別れのあいさつをしたい」と手紙にある。
「どうしたものか」と迷ったすえ、「物越しにお目にかかるのなら」とひそかに心待ちにした。
*物越し 御簾(みす)や几帳(きちよう)を隔てて対面する
十人余りの気心の知れた従者を伴った源氏一行が、晩秋の広々とした嵯峨野をわたってゆく。
いかにも物寂しい風情。
秋の花々はのこらず萎れかかり、霜枯れた浅茅が原は寂寥としている。
*浅茅が原 背の低い笹の密生する原っぱ
弱々しく聞こえてくる虫の音にまじって、時折、松風が蕭蕭と吹く。
耳を澄ますと、絶え絶えにかそけき楽の音が聞こえてくる。
まことに風雅である。
「この辺りに、思い悩んでいる御息所が住んでおられる。どうして、今まで訪れなかったのだろう」
源氏は、過ぎ去った日々を悔やんだ。
源氏物語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)/角川書店
¥1,028
Amazon.co.jp
天翔る白日―小説 大津皇子 黒岩重吾 (中公文庫)/中央公論社
¥1,183
Amazon.co.jp①哀切!!大伯皇女と大津皇子
↧
賢木③嵯峨野
↧