玉の緒よ 絶えなば絶えね
相聞歌(恋愛歌)の多い百人一首の中でも、わたしは忍びの恋を詠んだ歌に魅かれる。
殊に、式子内親王の一首に胸を突かれる。
○玉の緒よ 絶えなば絶えね 永らえば 忍ぶることの 弱りもぞする
世間に浮名を流し、いとしい方に自分の恋心が知られてしまうくらいなら、いっそう死んだほうがましだ、という激しくも哀れな恋情のほとばしりは、わたしに、ひとりの友と、彼の青春に光と影を投げた恋愛を思い起こさせる。
高校3年の夏であった。
友と、夜の博多の浜辺を高唱したり、受験や人生について論じ合ったりしながら歩いていた。
浜辺に足を投げ出し、寄せては返す波を見つめているうち、いかなる恋愛がもっとも燃焼度が高いか、ということに話題が及んだ。
月の光が、波間にきらきら輝いている。
当時、映画か小説かに影響されていたのだろう。
わたしは、好きな人を略奪することに漠然とではあるが憧れていた。
略奪愛だ、といった。
友は、忍びの恋、と応じた。(つづく)
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▲忍びの恋 玉の緒よ 絶えなば絶えね
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