古風で雅な青春
抑制した声の響きが、いつもと違う。
ハッとして、わたしは彼の横顔を見た。
何かを考えているような表情で、じっと海を見つめている
忍びの恋について、それ以上のことは聞かなかった。
友も、それっきり口をつぐんでしまった。
わたしは、自分がしたり顔で略奪愛といったことが、言葉だけの実に軽いものに思えてきて、ちょっぴり悔やんでいた。
忍びの恋という古風でみやびな言葉が、それから長くわたしの脳裏に快い余韻として残ることになる。
忍びの恋のなぞが、ついに氷解する日がくる。
浜辺での語らいから2年以上たっていた。
わたしたちは、東京の大学に進んでいた。
2年の時の12月だった。
みぞれまじりの冷たい雨の降る夜。
彼が不意にわたしのアパートを訪ねてきた。
そして、「明日の1番機で福岡へ帰る。航空運賃が少し足りない。貸してくれ」という。
お金を渡すと、暖まろうともせず、ただならぬ気配を残して帰っていった。 (続きます)
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忍びの恋 古風でみやびな青春
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