紫式部 菊池容斎画『前賢故実』
六条御息所 上村松園画『焔(ほのお)』
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ここ2、3日、葵の上はすこし回復していたのですが、急に容態が悪化してひどく苦しんでおります。どうしても、目を離すことができません」
「またまた、いつもの言い訳を」、
○ 袖濡るる 恋路と かつは知りながら
おりたつ田子の みづからぞ憂き
涙で袖を濡らすつらい恋路(こいじ)と分かっていながら、そこに踏み迷うわが身の愚かさ情けなさ
「『山の井の水』の歌のように、あなたの浅い愛情のせいでわたしの袖は涙で濡れてばかりでございます」
(注)「山の井の水」の歌
○ くやしくぞ 汲みそめてける 浅ければ
袖のみ濡るる 山の井の水 古今和歌集
ああ悔しい、あの人を愛してしまった。まだ山の井の水のように浅く、涙で濡れるのは袖ばかりではありますが
「さすがに御息所の筆跡は、並み居る女君たちの中でも抜きん出ている」
源氏は、御息所の教養の高さに改めて感心した。
「世の中は、ままならないものだ。気立ても容貌もそれぞれに何かしら取り柄があるが、これぞ妻にと思える人はいない」
源氏からの返事は、すっかり暗くなってから届いた。
「あなたのお袖が濡れるとは、一体どういうことでしょうか。それこそ、あなたの愛情が深くないからではありませんか」
○ 浅みにや 人はおりたつ わが方は
身もそぼつまで 深き恋路を
あなたの袖ばかりが濡れるのは、浅い恋路に立っておられるからです。わたしは全身ずぶ濡れになるほど、深い恋路に踏み込んでおります
「よほどのことがなければ、お訪ねいたします。今は、病人が重篤なのでございます」
そのころ、左大臣家では、物の怪が葵の上に取り憑いてひどく苦しめていた。
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