袿(うちぎ)
①平安中期以後の貴族女性や女官の角形広袖の衣服。上に唐衣 (からぎぬ) と裳(も)を着けて正装とした
②男性が、直衣(のうし)や狩衣(かりぎぬ)の下に着る衣服
壷装束(つぼしょうぞく)
女性が徒歩で外出するときの服装。頭からかぶった衣の裾を高くあげて帯で着付けた。市女笠(いちめがさ)をかぶるものも
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情けなさに涙がこぼれるのを、お供の女房たちに見られたくはない。
「来なければよかった」と後悔したが、しかし、ただでさえ眩いばかりの源氏の姿やたたずまいが、晴れの場では一段と輝いてみえる。
もし来なかったら、もっと臍を噛んだであろう。
なにはともあれ、「来てよかった」と思った。
一条大路をさっそうと進む馬上の人々は、身分に応じて姿形をととのえ、装束をたいそう豪勢に着飾っている。
なかでも上達部(かんだちめ、上流貴族)は格別だが、それでも源氏の光り輝くような美しさにすっかりかき消されている。
壷装束姿の中流階級の女たちや俗世を捨てた尼なども、人波に揉まれて倒けつ転びつしながら行列を見物している。
これまでは、「自分の立場もわきまえず、みっともない」と非難されたものだが、今回は、「源氏の君が勅使として行列に加わっているので仕方がない」と誰もとがめようとしなかった。
歯が抜けて口元が巾着のようにすぼんで、髪を袿(うちぎ)のなかに着込んでいる老婆たちが、合わせた両手を額に当てながら源氏を拝んでいるのは滑稽だ。
みるからに馬鹿面した下々の男たちが、自分の顔がどれほど変になっているかとも気づかず、うれしそうに源氏を拝んでいる。
源氏ほどの男が目を止めることはない、つまらない受領の娘(紫式部は受領の娘)たちまでが精一杯飾り立てた女車に乗り、源氏を意識して派手に振る舞っている。
*受領(ずりょう) 平安中期以降、任国に赴任して政務を執った国司。 県知事に相当。清少納言や和泉式部らも受領の娘
ことほどさように、見物している人々を見物するのもなかなか面白い。
源氏がお忍びで通っている女君たちのなかには、源氏のあまりの人気ぶりを目の当たりにして、自信をなくす者もあった。
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8/20広島市の土砂災害。9/27御嶽山の大噴火。11/22長野
で震度6弱の地震。
災害列島、日本。明日は我が身
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葵⑥スーパースター
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