玉鬘(たまかずら)の裳着
裳着(もぎ) 公家の女子の成人式 風俗博物館
藤の花
妻戸(つまど 開き戸)
御簾(みす)
几帳(きちょう)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
藤棚はこちらの隅にあるので、格子を開け放して女房たちが端のほうに座っている。
その近くで、身分の高そうな女たちが藤の花を眺めている。
源氏の腹ちがいの姉妹たちもいるようだ。
源氏は不躾なこととは思いながら、妻戸の御簾を引き被るようにして上半身を部屋へさし入れた。
「気分が悪いところへお酒を無理に飲まされて、苦しくて困っております。どうか、こちらの物陰にでも隠して頂けませんか」
「どうしましょう。困りますわ。身分の低い者なら、高貴な縁故に頼ると聞いておりますけれど」
部屋には空薫物のかおりが煙ったいほどで、女たちは衣ずれの音がことさら華やかに聞こえるように振る舞っている。
当世風で派手な雰囲気は、奥ゆかしい深みに欠けている。
源氏が、この部屋にきた目的はひとつ。
数日前、扇をとりかわした姫君をさがしだすことだ。
「どの姫君だろうか」
だれかがそれなりの反応をするだろうと、催馬楽(さいばら)の「帯」を「扇」にかえて、のんびりとした声で謡ってみた。
○石川の高麗人(こまうど)に、扇を取られて、からき悔いする
「扇を取られて、つらい目を見た」
あの姫君には、「帯」を「扇」にかえた意味がわかるだろう。
「妙な変わった高麗人ですこと。帯ではなく、扇を取られたですって」と囁きあっている女たちは、あの姫君ではない。
黙ったまま、時折、ため息をついている気配がある。
源氏はそちらへすっと身を寄せて、几帳越しに手をとらえた。
○ あづさ弓 いるさの山に まよふかな
ほの見し月の 影や見ゆとは
朧月の夜にお会いした、ほのかな月に似たあなたに再びめぐり会えるだろうかと探しあぐねていました
あの姫君と確信してのことではなく、当て推量にいうと、
○ 心いるかた ならなせば 弓張りの
月なき空に まよはましはや
本当に愛しているなら、たとえ弓張月のない闇夜でも迷うことなどありましょうか
まさに、姫君その人である。
その姫君を、これから朧月夜とよぶ。
桐壺帝が譲位して、朱雀帝の世になった。
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