高欄 (勾欄 こうらん)
建物の外縁や橋などに縦横に材をわたして、人の落下を防ぐ手すり(装飾を兼ねるものも)。
藤まつり 亀戸天神社
柳花苑(りゅうかえん)
雅楽の曲名。桓武天皇のころ唐から伝来。四人の女舞だったが、平安期に舞は絶えた。
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退屈を紛らすために琴を弾いていると、左大臣がやってきて、先日の「花の宴」が素晴らしかったことを話しはじめた。
「この年寄りは四代の帝にお仕えして参りましたが、今年ほど素晴らしい詩文と舞と管弦の音色を堪能して、寿命が延びる思いをしたことはございません。
それぞれの道の名人が数多いなか、光君がすべてに精通していらして、最もふさわしい人物をお招きになられたからです。わたくしのような老人も、つい浮かれて舞い出しそうな心地がいたしました」
「なにも特別なことはございません。ただお役目として、それぞれの道の名人たちをあちらこちらから招いたまでのことです。
それよりも、頭中将殿の「柳花苑」はきっと後代の手本 となりましょう。もし左大臣殿が「栄える春」に倣って舞われていたら、一代の誉れでございました」
そこへ、右中弁(うちゅうべん)と頭中将がやってきた。
3人がそれぞれ楽器をもち、高欄に背中を寄り掛からせて合奏したが、まことに興趣の尽きないものだった。
右大臣家では、姫君が夢のようにはかなかった逢瀬を思い出して、切ない物思いに沈んでいた。
右大臣はこの姫君を卯月(旧暦4月)に東宮に入内させようとしているので、いっそう塞ぎ込んでいる。
源氏はあのときの姫君が何番目の姫君か分からず、しかも自分を憎んでいる右大臣家の娘であることも気まずかった。
弥生(旧暦3月)も、20日が過ぎた。
右大臣家では「弓の結」があり親王や上達部が大勢集まったが、引き続いて「藤の花の宴」を催した。
* 弓の結(ゆみのけち)
射手を2組に分け、交互に弓を射させて勝負を争う競技
花の盛りは過ぎたが、古歌に教えられたのであろうか、遅れて咲いた二本の桜がとても美しい。
○ 見る人も なき山里の 桜花
ほかの散りなむ のちぞ咲かまし 伊勢 古今和歌集集
見る人もない山里の桜花よ、ほかの花が散ってしまった後に咲けばよいものを
新しく造営した邸宅を、姫君の裳着の儀式の日にあたって当世風に派手に飾り立ててある。
* 裳着(もぎ 男子の加冠にあたる)
公家の女子が成人した印として初めて裳を着ける儀式
源氏にも、先日、宮中で招待状を渡していたが、まだ姿を見せていない。
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10年後が、楽しいような怖いような--
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花宴⑦藤の花の宴
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