挿頭(かざし)の花
南殿(なでん)、紫宸殿(ししんでん)の異称
帝の即位や立太子、節会(せちえ)などの重要な儀式が行われた内裏の正殿。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
二月二十日過ぎ、帝は南殿(なでん)の花の宴を催した。
源氏は、20歳になった。
中宮と東宮の御座所は、玉座の左右に設けてある。
弘徽殿(こきでん)女御は、娘ほどに若い藤壺が自分の上座を占めることが不愉快でならないが、花の宴のような盛大な催しを欠かすわけにはいかない。
空は晴れわたり、鳥たちのさえずりが耳に心地よい。
まず親王や上達部(かんだちめ:上流貴族)をはじめとして、詩文の才にすぐれた人々が、それぞれ韻字を与えられて漢詩を作った。
源氏の、「春という文字をいただきました」という声が、いつもながらに伸びやかで美しい。
そして、即興で作った漢詩を声高らかに披露した。
次は、ライバルの頭中将。
いつも比較される源氏のあとで、どう思われるか不安だったが、とても落ち着いていて特に声の張り方など堂々として立派だった。
後につづく人々は、ふたりの出来栄えに気後れして青ざめている。
高齢の文章博士(もんじょうはかせ)は身なりこそ見すぼらしいが、さすがに場馴れしている。
夕陽が、西の空に沈もうとするころ。
「春鴬囀」(しゅんのうでん:雅楽)という舞をこのむ東宮は、紅葉の賀の折りに源氏が舞った「青海波」を思い出して挿頭(かざし)の花を与え、今日は「春鴬囀」を舞うように頼んだ。
源氏はむげに断わるわけにもいかず、ゆるやかに袖をひるがえすところを一差しだけ申し訳のように舞ったが、さすがに息を呑むほどに見事である。
後見人の左大臣は、日ごろの恨みつらみを忘れて感動のあまり涙を落としている。
そういえば、源氏はもうずいぶん久しく正妻である葵の上のところに通っていない。
藤壺中宮は源氏に目が止まるたびに、「弘徽殿女御が光君をひどく憎んでいることが不思議」で、またそれ以上に、自分が、「光君に魅かれている」ことが悲しかった。
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花宴①花の宴
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