Quantcast
Channel: 吉備路残照△古代ロマン
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1644

紅葉賀⑰媚態

$
0
0


風俗博物館牛車 牛車 風俗博物館

源氏物語ミュージアム牛車 半蔀車(はじとみぐるま) 牛車(ぎっしゃ)の一種。上皇・摂関・大臣・大将が使用した。宇治市源氏物語ミュージアム

  ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇

源氏は、「ずいぶん、若づくりをしたものだな」と思う一方、「今、どんな気持ちでいるのだろう」と気になって、裳の裾をちょっと引っ張ってみた。


源典侍(げんのないしのすけ)は派手な彩色を施した扇をかざして、振り返った。

まなざしは、思い入れたっぷりの流し目。

年季が入っているだけに媚態が身についているが、目もとは黒ずんで窪み、頬の肉はげっそりと落ちこんでいる。

扇で隠しきれない髪の毛は、すっかりそそけている。


源氏が、「その扇は、年に似合わない。派手すぎる」と自分の扇と取り替えると、隅のほうに、古めかしいが風流な筆跡で書き流していた。

「森の下 草老いぬれば (年寄りだから男が寄りつかない)」

「なんとまぁ明け透けな。他に書くこともあろうに」

源氏は苦笑しながら皮肉まじりに、

「『森こそ夏の宿りなるらし』という歌のように、あなたのところには宿る男が多いのですね」


源氏はだれかに見られないかと気が気でないが、源典侍はまるで頓着しない。

思わせぶりに、

○ 君し来ば  手なれの駒に  刈り飼はむ

     盛り過ぎたる  下葉なりとも

光君がいらしたら、お召しの馬に草をご馳走しましょう。盛りを過ぎた下草ですが、わたしとともに

源氏は煩わしくなって、

○ 笹分けば  人やとがめむ  いつとなく

     駒なつくめる  森の木隠れ

森の木隠れの笹を踏み分けて訪ねたら、咎められましょう。いつも大勢の男たちがあなたを慕って集まっているのですから

源氏が立ち上がろうとすると、袖にすがって泣き出した。

「こんなつらい思いをしたことはございません。今になって捨てられるとは、いい恥さらしです」




源氏物語幻想交響絵巻・完全版 冨田勲 /日本コロムビア

¥4,104
Amazon.co.jp



ベスト・パートナーになるために―男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール /三笠書房

¥576
Amazon.co.jp



平成26年10月、東海道新幹線は開業50周年ペタしてね

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1644

Trending Articles