元服前の光源氏 風俗博物館
この頃の源氏は、帝の計らいで、亡き母・桐壺更衣に与えられていた後宮の淑景舎(桐壺)に住んでいる。
元服の儀(12歳)の前日まで、顔を覚えていない母にそっくりと女房たちに聞かされてきた藤壺の部屋(飛香舎)へ自由に出入りして、仲良く遊んでいた。
親しみから憧れ、そして恋心へ。これが、「源氏物語」の原点。
高松塚古墳壁画女子群像
若い女たちが、赤裳(も)の裾を長く引きながら歩いている
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しかし人に知られたらいかにも決まりが悪いので、ほどなく素っ気ない態度をとるようになる。
源典侍は、源氏の豹変ぶりがつらく恨めしかった。
なお、源典侍には実在のモデルがいたという説がある。
紫式部の夫・藤原宣孝(のぶたか)の兄嫁の源明子である。
宣孝は、紫式部の父・藤原為時(ためとき)の友人。
明子は、宣孝の兄嫁だから紫式部よりも相当に年上である。
明子も源典侍と呼ばれていて、大変な色好みで有名だった。
50歳の頃、ひどい浮き名が流れて辞表を出したほどである。
すなわち、モデルは紫式部の年の離れた義姉というのだ。
描き方からすると、作者は明子に対して好感をもっていない。
もっとも紫式部は、物語や日記のなかだけでなく現実でも同性に対してやたら厳しく、清少納言や和泉式部など同時代の女流文学者の悪口を書き残している。
ある日、源典侍は帝の髪を整えていた。
整髪が終わり、帝は装束係の者を呼んで部屋を出ていった。
部屋には、源典侍だけが残っている。
そこへたまたま源氏が通りかかった。
源典侍はいつになくこざっぱりとして、しかも艶っぽい。
衣装や着こなしが華やかで洒落ているのだ。
源氏は、「ずいぶん若づくりをしたものだな」と思う一方、「今、どんな気持ちでいるのだろう」と気になって、裳の裾をちょっと引っ張ってみた。
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前回、「あなたの晩年は、いつですか」などと出来損ないの禅問答のような問いかけをしていますが、「自分の晩年」は「自分の死後」に初めて分かることだから、自分が知ることなんてできませんよね。
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紅葉賀⑯源典侍のモデル
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