御簾(みす)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
そこで、源氏は腰が抜けるほどの衝撃を受ける。
御簾(みす)の向こうから、意を決したような凛とした藤壺の声がきこえた。
「光君は元服されました。もはや立派な大人の男性です。もう、ここに来てはいけません」
つい先日まで、桐壺帝の特別な計らいで藤壺の部屋に自由に出入りして姉と弟のように仲良く遊んでいた。
その藤壺の部屋に入れないという。
いつも風にそよいでいた優しい「御簾」が、頑丈な「壁」に一変したのである。
「もう、ここに来てはいけません」
そのとき藤壺の部屋に入らなかった源氏は、国柄も時代状況も話の筋も違うとはいえダスティン・ホフマンになれなかった。
キャサリン・ロスを略奪できなかった。
末摘花☆千年のいじめ
この欠乏感を埋めようとして、源氏のあくなき女性遍歴がはじまる。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
藤壺は、お産のため里下りした。
帝や三条宮家(藤壺の実家)の人々をはじめ宮中をあげて出産を待ち望むなか、予定の12月が過ぎ翌年の1月になっても何の気配もない。
普通では考えられない遅れに、「物の怪の仕業だろう」と世間の人々は噂しあった。
帝は心配して、僧たちを呼んで加持祈祷を頼んだ。
藤壺は自分を信じきっている帝に申し訳なくて、このまま死んでしまうのではないかとさえ思い詰めていた。
でも、いまは帝や源氏をふくめて全ての人々を偽りつづけなければならない。
なんとしても、生まれてくる子を「帝の子」にしなければならない。
この「秘密の子」を守るためには、わたしの身などいつ滅んでもかまわない。
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女性閣僚5人はいいが、政調会長をふくめて国際感覚よりも個人的心情を優先させる顔ぶれが目立つ。