太政官 律令制における司法・行政・立法を司る国家機関。太政大臣は常設ではなく、通常は左大臣が行政の最高責任者
光源氏の元服 風俗博物館n京都市
加冠(かかん:冠を被せる)役は左大臣。奥は桐壺帝
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
葵の上は、「源氏が二条院にむかえた若い女君」のことを聞いたばかり。
聞く耳をもたないのも当然であろう。
ここで、しっくりいかない源氏と葵の上が結婚にいたった経緯を振り返っておきたい。
桐壺帝は母方に有力者のいない光を皇籍に残したままにしておくと、いずれ肩身の狭い思いをするだろうと臣籍に降した。
内心では、義兄(のちの朱雀帝)よりずっと優れている光を東宮(とうぐう:皇太子)にしたかったが、母・桐壺更衣の出自が低いゆえに当時の習わしとしてはありえなかった。
やむなく、源氏の姓をあたえ、左大臣に後見を頼んだ。
左大臣には葵の上という源氏より4歳年上の一人娘がいる。
幼い頃から、東宮妃にするつもりで大事に育ててきた。
本人も、そのつもりでいた。
だが、桐壺帝から話があると左大臣は政治的思惑から喜んで後見人を引き受け、源氏が元服した日に娘をとつがせる。
嬢がせるといっても当時は通い婚だから、葵の上は父の左大臣邸で暮らす。
源氏は12歳で、葵の上は16歳。
現行の学校制度では、高校生のお姉さんと小学生のぼうやである。
ほとんどが政略結婚である当時の貴族社会においては、ふたりの年齢や年の差はさして珍しいことではなかったようだが、今の感覚からすると、人としての成熟度にかなりの開きがあるような気がする。
源氏が16歳で、葵の上が12歳であれば少しはましだったのではないだろうか。
いやいやそういうことではなく、そもそも平成のものさしを千年前の事柄に当てること自体にあまり意味がないのかも知れない。
とにかく、東宮妃になるものと思っていた葵の上は臣籍に降った源氏にとつぐことに失望し、一方では自分が4歳年上であることをずっと気にしている。
こうした表面的で打算的な葵の上に対して、源氏はもっと深刻で本質的なことに思い当たる。
初夜に結婚の一端を知った源氏は、自分の心の真ん中に幼いころから憧れていた藤壺がいることに気がついたのだ。
翌日、宮中に戻るとすぐに藤壺の部屋をたずねた。
そこで、腰が抜けるほどの衝撃を受ける。
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