冷泉帝即位時の系図
伝土佐光起筆『源氏物語画帖』若紫
スズメが飛んでゆくほうを眺める若紫(紫の上)
尼君や侍女らがいる僧都の家を外から垣間見る光源氏
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
女房たちがため息まじりに源氏を見送っているところへ、若紫が走ってやってきた。
そして源氏を見送るとすぐに自分の部屋にもどって、人形たちの中の源氏と決めている人形を着飾らせて参内する真似をさせた。
若紫があまりにも幼いので、乳母(めのと)の少納言がたしなめる。
「今年からは少し大人らしくなさいませ。十歳を過ぎたら、お人形遊びはしないものですよ。お婿様もおありなのですから、奥方らしくおしとやかにお振る舞いください」
このあたりの記述は、いぜん、北山の僧房で源氏かはじめて若紫を垣間見たとき、片時も忘れられない藤壺と瓜二つなのに驚いたときのことをなぞっている。
藤壺と若紫が、叔母と姪の関係にあることを知ったのはもう少しあと。
あのとき、うっかり者の犬君(いぬき)は、かごに飼っていた雀の子をにがして若紫を悲しませていた。
また、自分の老い先が短いこともあって、祖母の故尼君が若紫が幼すぎることを嘆いていた。
「お婿様もおありなのですから」と少納言にいきなり聞かされても、若紫はさほど驚かない。
「わたしにはお婿さんがいるのだわ。光君ね。女房たちのお婿さんはみんな年老いて醜いのに、わたしにはあんなに若くて素敵なお婿さんがいるのだわ」
朝賀を終えると、源氏はひさしぶりに左大臣邸へむかった。
葵の上は左大臣に促されてしぶしぶ源氏のまえに美しい端正な姿を見せるが、いつにもまして表情が硬い。
にこりともせず、威儀を正している。
気づまりな空気のなか、源氏、
「今年からはもう少し夫婦らしく振る舞ってくださったら、どんなに嬉しいことでしょう」
葵の上は、「源氏が二条院にむかえた若い女君」のことを聞いたばかりである。
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