和琴(わごん)を弾く紫の上 風俗博物館
白楽天/白居易
唐の詩人 (772~846) 『源氏物語』は、白居易の「長恨歌 ちょうごんか」に影響を受けている。
「気立てがよく、気兼ねのいらない女はいないものか」
おもわず声に出たらしく、それをたまたま大輔の命婦(たいふのみょうぶ)という色好みの若い女房が聞きつけた。
命婦の父は皇族の血を引く兵部の大輔(ひょうぶのたいふ)で、母は源氏の乳母(めのと)の左衛門の乳母。
内裏(だいり)に、女房として仕えている。
母は父と別れ、筑前守と再婚して任地(福岡県)へ赴いた。
命婦は、父が住んでいた常陸宮邸(ひたちのみやてい)を里方(さとがた)にして内裏へ通っている。
常陸宮邸に、亡き常陸宮の晩年に生まれて格別にたいせつに育てられた姫君(末摘花 すえつむはな)がいる。
命婦は、その末摘花が生活に困窮して日々心ぼそく暮らしていることを源氏に話した。
源氏は気の毒に思って、命婦にたずねる。
「どんな姫君なのか」
「性格や容姿など、くわしくは存じません。おとなしくて控え目なので、用向きのときだけ物を隔てて話しております。琴(きん)が、話し相手のようです」
「白楽天は琴と酒と詩を三友(さんゆう)といったが、酒は女には向かないね」
「酒は女には向かない」と思いこんでいる源氏は、千年後の「酒と女」事情を知る由もない。
「姫君の琴の音をぜひ聴いてみたい。常陸宮は、その方面に造詣が深かった。姫君も相当なものだろう」
「いいえ、源氏の君がわざわざ足をお運びになるほどではありません」
「つぎの朧月夜(おぼろづきよ)にでかける。そなたも内裏から下がっておくように」
命婦は面倒なことになったと思ったが、命令には逆らえない。
父の兵部の大輔は新しい妻のところに住みついていて、時々常陸宮邸にやって来た。
命婦は継母のところには住みづらく、ひとり常陸宮邸に身を寄せている。
源氏は言葉どおり、十六夜(いざよい)の月の美しい時分に姿をみせた。
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