姫君(若紫)の系図
京都祇園祭
八坂神社/祇園社の祭礼 毎年7月1日から1か月間
乳母(めのと)が、姫君を源氏の方へそっと押しやった。
父・兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや)の邸では継母にいじめられると心配していた亡き母と祖母の思いが無意識のうちにそうさせたのだろう。
明け方、二条院にもどった源氏と入れ替わるように兵部卿宮がおとずれて姫君を引き取ると告げた。
「こんな古びた屋敷で暮らしている幼い姫が不憫だ。やはり、あちらの邸に引き取ろう。何の気がねもいらない。乳母には部屋をあたえるから、今までどおり仕えてほしい。
むこうにも小さい姫たちがいる。仲良くやっていけるだろう」
宮が姫君を呼び寄せると源氏の移り香が衣服に残っている。
「おや、いい匂いだ。衣服はすっかり草臥れているのにね」
「もうしばらくお待ち願えませんでしょうか。まだ尼君を恋しがられて、お食事も召し上がりません」
たしかに姫君はひどく面やつれしているが、それでいっそう上品で可愛らしく見える。
「姫はどうして、そんなに尼君を恋しがるのですか。亡くなられた方のことを考えても仕方がない。私がいるので安心なさい」
日が暮れかかって兵部卿宮が帰ろうとすると、姫君はやはり心細いのか、父の袖に取りすがって声を立てて泣きだした。
宮ももらい泣きして、
「泣かなくてもいい。今日か明日のうちに迎えにこよう」
頭を撫でながら繰り返しなだめすかして、帰っていった。
姫君は尼君が亡くなってからというもの、人がいないところでは泣いてばかりいる。
将来のじぶんの身の上のことなど分かるはずもなく、ただ長いあいだ離れることなく一緒に暮らしてきた尼君がもういないと思うとただただ悲しいのだ。
幼心にも悲しみに胸がふさがって、かつてのように女の童(めのわらわ)たちと無邪気に遊ぼうとはしない。
昼間はどうにか気持ちを紛らしているが、夕暮れになるとひどく塞ぎこんでしまう。
乳母たちは、姫君を慰めかねている。
「この様子では、これからどうしてお暮らしになれよう」
源氏の使いでやってきた惟光(これみつ)が、「今日か明日のうちに姫君が兵部卿宮邸に引き取られる」ということを知った。
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