夏直衣(のうし)
葵祭(賀茂祭) 毎年5月15日 *下に、二日前の葵祭の動画
少納言の乳母から、行き届いた返礼がとどいた。
忌みが明けて、しばらく経ったころ。
姫君が都の屋敷に帰っていることを知った源氏は、数日後の夜に姫君をたずねた。
寂寥として荒れたはてた屋敷であり、住んでいる人もいたって少ない。
幼い姫君は、どんなにか心細いことだろう。
少納言の乳母が源氏に尼君の臨終の様子などを泣きながら話しているうちに、源氏ももらい泣きの涙で目をはらした。
「兵部卿宮が、姫君をご自分のお邸に引き取ろうと仰っておられます。
ただ、亡くなられた母君が生前、心配しておられました。
『あの子は大勢いらっしゃる北の方のお子たちの中で侮られはしないだろうか、苛められはしないだろうか』
母君はいつも宮の北の方にひどい仕打ちを受けて、つらい思いに耐えておられました。
源氏の母・桐壺更衣が、桐壺帝の第一夫人格である弘徽殿女御らにいじめ抜かれたことと実によく似ている。
姫君が亡くなった尼君を慕って泣き臥しているところへ、女の童(めのわらわ)たちがやってきた。
「直衣を着たお方がいらっしゃいましたよ。兵部卿宮がおいでになったのかしら」
小さな足音が、源氏の方へ近づいてくる。
「ねえ、少納言。直衣を着ているお方はどこなの。父宮がいらしたの」
その声が、なんともかわいらしい。
源氏が、応えた。
「宮様ではありませんが、関係がなくはありませんよ。こちらへいらっしゃい」
姫君は、「あの素敵な方のお声だわ」と聞き分けて恥ずかしくなり、乳母にすり寄った。
「ねえ、あちらへ行きましょうよ。眠いんだもの」
姫君が乳母の袖を引っぱると、源氏、
「どうして逃げようとなさるのですか。わたしの膝の上でお寝みなさい。もっとこちらへいらっしゃい」
乳母が、姫君を源氏の方へそっと押しやった。
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