若紫(紫の上)の系図
若紫(紫の上) 光源氏 藤壺 兵部卿宮 尼君 僧都
二条院跡候補地(陽成院跡)二条院…光源氏の母・桐壺更衣の実家を、桐壺帝が増改築した
「兵部卿宮のお血筋(娘)なので、藤壺様とそっくりなのだ」
兵部卿宮と藤壺は兄妹である。
ということは、あのいたいけな十歳ほどの少女は、源氏の脳裏を片時も離れることのない藤壺の姪ということになる。
源氏は少女を身近に感じて、ますます愛おしくなった。
人柄は上品そうで可愛らしく、素直で小賢しいところは少しもない。
「一緒に暮らして、自分の理想通りに育ててみたい」
源氏は、かねてから望んでいた「理想の女」の素材に出会えたのだ。
少女の身の上をもっと知りたくて、僧都にたずねる。
「それは、お気の毒なことでしたね。その方には、忘れ形見はいらっしゃらなかったのですか」
「亡くなる頃、女の子が生れました。老いさき短い妹(尼君)は、『その孫娘が心配の種』と思い悩んでおります」
源氏は思い当たることがあって、
「唐突な話に聞こえるかもしれませんが、その幼い方の後見人として私をお考え下さるよう、尼君にお話し願えませんでしょうか。
本妻(葵の上)はおりますが、初めからしっくりいかず、ほとんど独り暮らしをしております」
「大変うれしいお言葉ですが、あの娘はまだ幼稚です。後見して頂くにしても早すぎます。
もっとも、女というものは、だれかに世話をしてもらって一人前になるもの。尼と相談して、尼からお返事を差し上げます」
そう応える僧都の言葉のトーンが急によそよそしくなり、表情が硬くなった。
源氏は恥ずかしくなり、話を続けられなくなった。
当時の源氏は、今でいうなら高校三年生の18歳。
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若紫⑩「理想の女」の素材
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