紫式部像in紫式部公園 福井県越前市
夕顔が『雨夜の品定め』で頭中将が話していた常夏の女だと分かると、源氏はますます夕顔に興味をそそられた。
数日後、惟光の手引きで夕顔の寝室に忍び込んで、一夜の契りを結んだ。
そして、これまでの女にない、夕顔の自然体で素直な人柄に惚れこんでゆく。
無邪気で従順な、気が置けないタイプの女は初めてである。
源氏は明け方に夕顔と別れると、夜がくるのが待ち遠しくてならない。
ただ幾度となく身体を重ねても、夕顔は自らの素性を明かそうとはしなかった。
源氏も、「あなたが誰かは知っていますよ」などとは決して口にせず、質素な狩衣(かりぎぬ:普段着)姿で通った。
二人は互いの身元が分かっていながら、あえて触れなかったのはなぜか。
図式的には、夕顔は源氏にとって義兄(頭中将)の愛人であり、源氏は夕顔にとって愛人の義理の弟である。
もっとも、夕顔が頭中将の「愛人・恋人」なのか「妻」なのかはよく分からない。
ただ「正妻」でないことは、はっきりしている。
いずれにしろ夕顔は、伊予介の「正妻」である空蝉があれほど気にしている「人妻」の一歩手前であることは確かだ。
逢瀬を楽しんでいるとき、二人はそうした関係性を忘れたかったのだろうか。
ちなみに「人妻(ひとづま)」とはいうが、「人夫(?)」と言わないのはなぜだろう。
「人夫」には色気のカケラもない上に、読み(にんぷ)も意味(肉体労働者)も「人妻」のもつニュアンスとまったく違っている。
明け方、二人がまだ寝ている枕元の壁越しに男と女が大声でしゃべっている声やけたたましい物音が聞こえてきた。
宮中と二条院と貴族の邸宅しか知らなかった源氏には、初めて耳にする庶民生活の声であり音である。
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夕顔④素直で従順な女
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