空蝉関連系図
自分の部屋へ連れ込もうとしたちょうどその時、湯屋から戻ってくる中将と鉢合わせした。
中将が、暗がりの中で「何ごとか」と目を凝らすと、男が女を両手で抱えて部屋へ入ろうとしている。
あたりには、えもいわれぬ芳香が立ち込めている。
そこで、すべてを理解したが、相手が相手だけに声を出して咎めるわけにはいかない。
ただただ驚き呆れている中将に、源氏が声をかけた。
「夜が明ける前に、お迎えに来なさい」
時代が違うとはいえ、えらく堂々とした17歳である。
空蝉(うつせみ)は、まるでモノのように運ばれていることだけでも逃げ出したくなるほど屈辱的で情けないのに、そういう自分の惨めな姿を目撃した中将がどう思っているかと想像すると顔から火が出るほどに恥ずかしくいたたまれない思いだった。
源氏は襖を閉めると、空蝉をふとんにそっと横たえた。
空蝉は恥ずかしさと悔しさで死んだようになっている。
源氏はふたたび、いったいどこから出てくるのかと不思議に思われるような甘い言葉を降り注ぐが、空蝉はけっして心を開こうとはしなかった。
「こんなことがあって、よいものでしょうか。どうせ私など、数ならぬ身です。それでも、私には私なりの生き方がございます。結婚する前に、あなた様と結ばれたらどんなにか幸せだったことでしょう。人妻の身で、こんなことになって本当に辛うございます」
「人妻でなかったら……」という点は、あの方と同じ。
まばゆいような源氏の美貌に魅かれながらも、空蝉は泣きながら訴えた。
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空蝉⑥人妻の身で
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