中央官制と地方官制
図が不鮮明ですが、受領階級の「受領」は、「国司」とほぼ同じ意味。紫式部も受領階級、つまり『源氏物語』でいう「中流」です。
襖(ふすま)を横に引くと、掛け金がかかっていないらしくすんなり開いた。
ほの暗い部屋の中に衣装箱や寝具などが雑然と置いてあり、それらの間に小柄な女が横になっている。
源氏が方違えのため急に紀伊守の屋敷を訪れたので、空蝉は、この物置のような部屋をあてがわれたのだろう。
源氏は忍び寄って、空蝉(うつせみ)が身体の上に重ねている着物をそっとはいだ。
しかし、空蝉は女房の中将が湯屋から戻ってきたと思っているのか、目を閉じたまま。
源氏が空蝉の耳元でささやいた。
「お呼びの中将が参りました」
・光源氏の当時の官位は、中将
男の声と分かって、空蝉は驚き、そして怯えた。
「あっ」と短く叫んだきり、身体を震わせている。
「けっして、気紛れではありません。どうか怖がらないで下さい。前からお慕いしておりました。今夜、こうしてお会いできたのは何かのお導きです」
プレイボーイの特殊技能なのかどうか知らないが、源氏は初対面の相手だろうと誰だろうと、こんな歯の浮くようなセリフを臆面もなく並べ立てる。
「お人ちがいでしょう」
空蝉は震えながら抵抗するが、源氏は自分の部屋へ連れ出すためにひょいと空蝉を抱き上げた。
そして自分の部屋へ連れ込もうとしたちょうどその時、湯屋から戻ってくる中将と鉢合わせした。
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空蝉⑤人妻を拉致
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