火の燃え立つも見ゆ
薬師如来像を作り、「京にとくあげたまひて、物語のおほく候なる、ある限り見せたまへ」と朝夕に祈るほどであった。
(早く上京させて下さい。そして、たくさんある物語を、すべて読ませて下さい)
13歳のとき、待ちに待った帰京の日を迎える。
在原業平が『伊勢物語』の中で、
○名にしおはば いざこととはむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと
(都鳥という名を持っているのなら聞いてみよう、都鳥よ、都にいる私の愛する人は元気かどうかと)
と詠んだ隅田川を渡ったり、活火山だった富士山の
「頂のすこし平ぎたるより煙は立ち上る。夕暮れは火の燃え立つも見ゆ」姿に感動したりして、3か月ほどかかって都に着いた。
母に再会すると早速、「物語もとめて見せよ、物語求めて見せよ」と責め立てたが、少々の本は少女にとっては焼け石に水。
すぐに読み終え、別の本が欲しくなる。
そうこうするうちに少女の身辺に暗い影が差し始めた。
文学に目を開かせてくれた継母が、父と不和になって家を出た。
翌年には、大好きな乳母が世を去り、また手習いを教わりたかった藤原行成の娘が亡くなる。
17歳のときには姉が亡くなり、幼児と乳児の姪たちが残された。
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