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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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藤壺⑧藤壺、里下り

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$吉備路残照△古代ロマン-源氏物語ミュージアム 『源氏物語ミュージアム』     京阪宇治線 宇治駅下車 疾走約4分 徒歩約11分
宇治川を隔てて、宇治平等院。
平安王朝の雅な雰囲気にひたるには最適の場所かも知れません。

$吉備路残照△古代ロマン-源氏物語ミュージアム1 空蝉(うつせみ)と軒端荻(のきばのおぎ)の碁の対局を垣間(かいま)みる光源氏 


帝は、元服と結婚の祝いとして、亡き桐壺更衣の実家を全面的に改築して、源氏の私邸とした。

これが、「二条院」である。

立派になった邸を眺めて、源氏は何度も夢想した。

「この邸で、藤壺の宮と暮らせないものか」


18歳の春、源氏は高熱に悩まされて、北山に転地療養する。

治療のあいまに鞍馬寺あたりを散策しているときのこと、趣のある小柴垣越しに中を垣間見ると由緒ありげな家があった。

ちょうどその時、10歳ほどの可憐な女の子が、気品のある尼君のところへ駆けて来た。

この少女こそ、のちに源氏が引き取った「紫の上」である。


源氏は、その少女にしばらく見とれていた。

あまりにも似ている。

片時も心を離れない藤壺に、あまりにも似ている。

会えなくなって久しい藤壺のことを思って、源氏の目から涙があふれてきた。


源氏にとって、藤壺は「所与の」理想の女であり、紫の上は「自らの手で育てた」理想の女である。

ちなみに、藤壺と紫の上は、叔母と姪の間柄。


源氏が、都へ戻ってしばらく経ったある日。

「藤壺の宮の病状が重く、実家に帰っている」という噂が耳にはいった。

帝が藤壺の体調を何くれと心配して憔悴しきっている様子が痛々しく気の毒だったが、源氏は別のことを考えていた。

「(内裏では会えないが)実家なら、藤壺の宮に会う絶好のチャンスだ」


源氏は、なにも重病の藤壺を見舞いたいわけではない。

父親を裏切ることといい、藤壺の実家に行きたい動機といい、現代の倫理観をもってしてはとても理解できない。

源氏の思考と行動には、か弱い小動物を追いかける猟犬のようなところがある。


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