市川雷蔵&若紫の若尾文子 六条御息所の中田康子
藤壺が、入内(じゅだい:女御か更衣になること)したのは15歳の時。
もちろん、女御である。
その時、光る君は10歳。
きれいなお姉ちゃんが、やって来たようなものだ。
翻って、桐壺帝は、藤壺にとって父親のような年齢である。
平成の世でも、親子のような年の差婚が時々世間を賑わすが、新婦が15歳はない。
作者の紫式部自身、宮廷に出仕する以前、父親のような年格好の藤原宣孝と結婚していた。
娘をひとり儲けたが、夫とはほどなく死別している。
異例なことだが、帝は、藤壺を訪ねるときに光る君を伴った。
御簾(みす)の中にさえ入れた。
「どうか、この子を可愛がってほしい。この子の母親とあなたは実によく似ている。ふたりは、母と子のようなものだ」
帝がこよなく愛していたと聞いている桐壺の更衣と自分が似ているということを耳にしたのは初めてではないだろうが、直接聞かされると、やはりつらい。
もしかしたら、この時点で、藤壺はやり切れない空しさに襲われたかも知れない。
「わたしは、身代わりだったのだ」
それでも、帝の心は更衣から徐々に藤壺に移ってゆく。
一方、光る君は、事あるごとに女房たちに聞かされた。
「藤壺の宮様は、亡くなった母上にそっくりなのですよ」
10歳の少年が、母の面影があるという5歳年上の美少女に憧れを抱くようになるのは当然だろう。
精一杯の好意の表現に、季節ごと、美しい花や紅葉の枝をプレゼントした。
藤壺にしても、帝よりも光る君に魅かれるようになるのは自然の成り行きではないだろうか。
それにしても、紫式部は、「帝の実子と后の密通」という大胆なテーマを取り上げたものだ。
これが、『源氏物語』という大長編の全編を通して鳴り響く。
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