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源氏物語の女たち①恋愛事情

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$吉備路残照△古代ロマン-歌垣 ムリヤ・ゴンド族(インド)の歌垣


◆いづれの御時(おほんとき)にか、女御(にょうご)・更衣(こうい)あまた候(さぶら)ひたまひける中に、いとやむごとなき際(きは)にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。

女御&更衣:ともに天皇の夫人……地位は、皇后(中宮)→女御→更衣

■いずれの帝のご時世であったろうか、女御や更衣が大勢お仕えしている中に、さほど高い家柄の出身ではないが、とりわけ帝の寵愛を受けていらっしゃる方がいた。


多くの方が中学生や高校生だったころ、『平家物語』や『方丈記』、『徒然草』、『奥の細道』などとともに、『源氏物語』の冒頭文を暗唱させられたのではないだろうか。

もしかしたら、『源氏物語』は日本を代表する、いや世界でも最も古い時代に書かれた、飛び抜けて優れた文学作品であるという講釈つきだったかも知れない。


一方では、「男と女がどうしたこうしたという話ばかりの長編官能小説ではないか」という言われ方もないではない。

おそらく、読み方によって両方ともに当てはまるのだろう。

ただし、宮廷で読まれることが前提で書かれた物語だから、いわゆる「濡れ場」の描写はない。

紫式部は、その辺のところはほのめかすだけで、読み手の想像に任せている。


それはともかく、今、この稚拙なブログを訪れて下さっている女性の皆さんが、『源氏物語』のヒロインでないことは、それだけで大きな幸せなのかも知れない。

というのは、宮廷社会においてはロマンチックな出会いなどなく、男と女の関係はたいていお互い相手の顔を知らないままに、男が女に仕える女房の手引きによって、女が寝ている部屋に忍び込むことから始まったからだ。

光源氏など、そんな意識は全くなかっただろうが、十代半ばから既にドン・ファンであり、レイプの常習犯である。

女性の、今でいう人権は、まったく考慮されていない。

女流の大作家である紫式部も、何ら疑問を抱いていなかったようだ。

いかに人は時代の制約の中で生きているか。


他方、『万葉集』によると、筑波山(茨城県)などにおいて、歌垣(うたがき)という風習が存在した。

歌垣とは、若い男女が特定の日の夕刻に集って、お互い気に入った相手に求愛の歌謡を掛け合う習俗である。

歌を作らなければならない分、「知的な合コン」というところだろうか。

意気投合した男女は、手に手を取ってどこかへ姿をくらまし、夜が明けるまでに戻ってくればいい。

宮廷周辺での何やらおぞましい恋愛事情よりも、はるかに自由で楽しそうで大らかではないか。

中国南部からインドシナ半島北部にかけての山岳地帯や、フィリピン、インドネシア、インドなどでは、現在も歌垣のような風習が行われているそうだ。


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