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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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⑫草薙の剣

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$吉備路残照△古代ロマン-三種の神器 三種の神器  上から ・八咫鏡(やたのかがみ) ・天叢雲剣=草薙剣(あめのむらくものつるぎ=くさなぎのつるぎ) ・八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)


あふれでた大量の血しぶきは肥の河に流れ込み、川面が真っ赤に染まった。

スサノオは首を失ったオロチに止めを刺そうと、八つの尾を順番に斬り落としはじめる。

そして、いくつ目かの尾に十拳剣(とつかのつるぎ)を振り下ろした時、「ガチッ!!」という鈍い音がして、剣の刃が折れた。

最強を誇っていた十拳剣の刃が、である。

怪訝に思って、その尾を切り裂くと、中から光り輝く太刀が現れた。

取りだすと、あまりにも見事な太刀ゆえ、スサノオアマテラスに献上しようと高天原に出向いた。

これが三種の神器の一つの草薙の剣(天叢雲剣)であり、今は熱田神宮(愛知県名古屋市)にご神体として祀られている。


こうして、高天原では乱暴の限りを尽くした「荒ぶる神」・スサノオは、ヤマタノオロチを退治することによって出雲地方を救った「英雄神」となり、オオクニヌシをはじめとする出雲の神々の祖神となった。

そもそも八つの首と八つの尾をもつヤマタノオロチとは、何を表わしているのか。

肥の河が真っ赤に染まる、とはどういう意味なのか。

これらは単なる奇想天外な作り話ではなく、当時の出雲地方の地形や産業を踏まえた伝承なのだそうだ。


ある日、スサノオと妻のクシナダヒメが、愛の巣を探し求めるために周辺を歩き回っていた時、すばらしく見晴らしの良い土地を見つけた。

思わず、スサノオは叫ぶ。

「おお~、ここは何と清々しい土地なんだ!!」

その地を、「清々(すがすが)しい」の読みから「須賀」と名づけ、ふたりのための宮殿を建てることにした。

やがて宮殿が完成したとき、ふたりを祝福するかのように、むくむくと雲が湧き上がってきた。

その情景を、スサノオは三十一(みそひともじ)文字に詠む。

〇八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに

        八重垣作る その八重垣を

和歌(短歌)のはじまりである。

『万葉集』、『古今和歌集』から斎藤茂吉の『赤光』、はては俵万智の『サラダ記念日』などへ連綿と受け継がれていく。

スサノオは、アシナヅチを須賀の宮殿の長に任命した。

この場面からしばらく、愛すべきスサノオに活躍の場はない。

いよいよ、出雲神話の主役・オオクニヌシの出番である。



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