スサノオはアシナヅチの返答を聞くと、クシナダヒメを櫛(くし)に変えて、自分の角髪(みずら:髪全体を中央で二つに分け、耳の横でそれぞれ括って垂らす)に差した。
それから、老夫婦に指示した。
「できるだけ強い酒を造ってほしい。それから、垣根を張りめぐらせて八つの門を構えよ。門ごとに台を設えて、その上になみなみと酒を注いだ酒樽を置いて、待っていよ」
準備を整えて、隠れて待っていると、あたりの様子が一変。
空には不気味な黒雲が垂れこめ、稲妻が光り、雷鳴が轟いた。
地鳴りがして、大木の裂ける轟音が聞こえたかと思うと、四方の山々が崩れ落ちる。
と同時に、八つの鎌首をもたげた、凄まじい形相の巨大なヤマタノオロチが姿を現した。
ひとたび息を吐けば、それは嵐となり、大きな岩が飛んでいく。
スサノオは、その様子を息を殺して見つめていた。
ほどなく、オロチは酒の匂いに気がついたのか、地を這い空を窺いながら、匂いの出所を捜している様子。
酒の匂いに釣られるように、酒樽の方へ巨体を動かしていった。
それから、八つの頭をそれぞれ八つの酒樽につき入れ、飲み始める。
赤い目をさらに充血させ、がぶがぶと喉を波打たせながら8つの酒樽を飲みほしてしまったオロチは、したたかに酔いつぶれ、大いびきをかいて寝てしまった。
その時を待っていたスサノオは、足音を忍ばせてオロチに近づき、十拳釼(とつかのつるぎ)に手を掛ける。
そして、オロチの八つの頭をばらばらに斬り落とした。
胴体から、大量の血が吹き出す。
血の海に、オロチの八つの首がごろんごろんと転がった。
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世界遺産としての正式名称は、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」