江上波夫・東京大学名誉教授(1906~2002年) 考古学者
「髙天原は、朝鮮半島か中国大陸のどこかにあった」という気まぐれな思いつきは、近年まったく顧みられなくなった江上波夫著、『騎馬民族国家』の主張につながっている。
江上氏は、満洲にいた騎馬民族が4世紀後半から5世紀にかけて日本に侵攻して、大和朝廷を立てたと唱えている。
いくさ慣れした満洲の騎馬民族が、日本土着の農耕民族を征服して、大和に中央政権を樹立したということであろう。
ただ、「騎馬民族征服王朝説」は一般の考古学ファンには大いに人気を博したが、専門家の間では根拠が十分ではないということで受け入れられなかったようだ。
いずれにしろ、形は違っても、朝鮮半島か中国大陸に住んでいた種族が、その地域での勢力争いに負けたかなにかで、海を渡って列島に押し寄せたということではないだろうか。
『天孫降臨』などという芝居がかった造語からしても、海の向こうからやって来たのだろう。
「われわれ天孫族は、この国の絶対的な支配者である。お前たち土着の者どもは、平伏してわれわれに従わなければならない」という高飛車な意識が透けて見える。
平成の今もなお、多くの日本人に被支配者としての意識(無意識を含めて)が根強く残っているようだ。
しかも、被支配者としての意識が強い者ほど政界などで力をもち、二次的な支配者になっていることは歴史の皮肉以外の何ものでもない。
ある意味、1300年ほど前に書かれた『記紀神話』の日本人の内面に与えた影響がどれだけ大きかったか、また依然として大きいかの証明であろう。
横道にそれた。
今回のテーマは『髙天原神話』ではなく、土地と一体化している『出雲神話』である。
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出雲神話③騎馬民族征服王朝説
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