六代は12歳だが、世間の14、15歳の少年よりも大人びて見えた。
容姿と人柄、ともに優雅である。
ちなみに、父の維盛は、その美しさから「桜梅少将」と呼ばれ、宮中の女房たちに騒がれていた。
また建礼門院右京大夫は、自著『建礼門院右京大夫集』のなかで、維盛を、「今昔見る中に、ためしもなき(美貌)」と書き、その姿を光源氏に例えている。
その建礼門院右京大夫の恋人は、壇ノ浦で入水した維盛の異母弟・資盛(すけもり)であり、『建礼門院右京大夫集』には資盛との恋の日々を綴っている。
六代は、時政が用意していた輿に乗った。
輿の左右に、斎藤五宗貞と斉藤六宗光がつき従う。
時政が乗換えの馬の手綱を取っていた者を下馬させ、二人に馬に乗るよう勧めたが、両人とも乗らず、六代の左右を守るようにして嵯峨の大覚寺から六波羅まで裸足で歩き通した。
宿坊では新大納言と乳母が、天を仰ぎ地に伏して六代の身の上を案じていた。
新大納言が、乳母に語りかける。
「近ごろ、源氏の者らは平家一門の男の子たちをさらっては、水に沈めたり土に埋めたり、さまざまな方法で殺していると聞いております。あの子を、一体どんなふうにして……。
今日から私は、どうやって生きていけばいいのでしょう。この3年の間、夜となく昼となく、びくびくしながら暮らしていました。
いつかは、と覚悟はしていましたが昨日、今日のことになろうとは思ってもいませんでした。
日頃から長谷寺の観音様を信じ、どんなことがあろうともお見捨てにはならないだろうと頼みにしておりましたが、ついに捕らえられてしまいました。
私も死にたい……」
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2月23日が「富士山の日」と、ご存知でしたか。
私は知りませんでした。
山梨県と静岡県は、環境保全などを目的に今年の夏から入山料を試験的に導入するようです。