大納言典侍 (だいなごんのすけ 藤原輔子)
重衡は、「出家して髪を形見にとも思ったが、もはやそれもできない」というなり、額の髪の毛を下に垂らして口にかかった部分を歯で切り、「これを形見に」と渡した。
すると、大納言典侍は思いが込み上げてうつ伏してしまう。
ややあって、涙をこらえて言った。
「二位尼殿や小宰相殿(平通盛の妻)のように、壇ノ浦の波の底へ沈むべきでしたが、あなた様にもう一度お会いしたくて生き永らえてきました。それも、今日が最後なのですね」
そして、「お姿がやつれて見えます。着替えなさいませ」と、裏地のついた衣の小袖に白衣を添えて渡した。
重衡は着替えながら、脱いだ装束を、「これも形見に」
大納言典侍は、奥の部屋から硯(すずり)をもって来た。
「装束も頂きますが、筆の跡が後々までの形見になります」
重衡は、泣きながら和歌を一首したためた。
○せきかねて 涙のかかる から衣
後の形見に 脱ぎぞ替えぬる
あふれる涙が衣にかかって濡れてしまったが、死後の形見に衣を脱ぎかえてあなたに託します
大納言典侍の返歌。
○ぬぎかふる 衣も今は 何かせむ
今日を限りの 形見と思へば
脱ぎ替えた衣も今は何の役にも立ちません。今日限りの形見と思うと
重衡が、意を決したように立ち上がった。
「来世、また一緒になろう」
大納言典侍が、夫の袂(たもと)に取りすがる。
「どうか、もうしばらく」
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ちょっぴり恥ずかしく思いながら、昨日、『前田敦子はキリストを超えた:〈宗教〉としてのAKB48』を買い求めました。
筆者はどういう意味と根拠で、前田がキリストを「超えた」と主張しているのか。
AKB48のどこが、宗教性を帯びているというのか。
おいちゃんたちが前田敦子とAKB48を熱く語ったり論じ合ったりしている内容は、いうまでもなく彼女とグループの歌唱やダンスについてではありません。
あっちゃんの「人間性」とAKB48という「組織あるいは仕組み」に関心が向いているのです。
場合によっては、平成のアイドルを、『平家物語の群像』の番外編として載せてみようかと思っています。
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平家物語の群像 重衡被斬i②今生の別れ
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