源頼朝像 神護寺蔵
義経を腰越へ追い返した頼朝は、平宗盛・清宗父子は鎌倉に迎えている。
頼朝の座敷から庭を隔てた向かいの部屋に宗盛を住まわせているが、宗盛の様子を簾の内から見て、比企義員(ひきよしかず)に伝言させた。
義員が訪れると、宗盛はあわてて居住まいを正して畏った。
敗軍の将とはいえ、平家の棟梁らしからぬいかにも相手に媚びた振る舞いがなんとも見苦しい。
頼朝の面前でも堂々とした態度で鎌倉武士を唸らせた弟・重衡とは、これが血を分けた兄弟かと思わせるほどに違う。
…… …… 平重衡⑰重衡、頼朝と対面
居並ぶ諸国の大名や小名には京都の者がたくさんいるばかりか、かつて平家の家人だった者もいた。
多くが、宗盛の卑屈な態度を軽蔑した。
「ああ、情けない。今さら畏まったところで命など助かるものか。西海で入水すべきだったのに、生け捕りにされて鎌倉まで下ってくるとは」
「母の二位尼や弟の知盛殿らは潔く入水されたではないか」
「まったくだ」
一方、宗盛に同情して涙を流す者もいた。
次のような例え話をする者もいた。
「猛虎が深山にいるときは、百獣は震え上がる。だが、いったん檻の中に閉じ込められると、虎は人にへつらって食い物をねだる」
「宗盛殿も勇猛な大将軍ではあるが、生け捕りにされたら檻の中の虎と同じということだろう」
頼朝が、義員に伝えさせた言葉。
「わたしは平家を仇敵とは思っておりません。なぜなら、亡き清盛入道殿に命を救われたからこそ、20年余りも生きてこられたからです」
「しかし平家が朝敵となられて、追討すべき旨の院宣を賜った以上、勅命に背けるはずもなく、こうしてお迎えした次第です。お目にかかれたこと、うれしく存じます」
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平家物語の群像 宗盛被斬①卑屈な態度
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