築山御前の首塚
力の論理の支配する乱世のむごたらしさを思わずにはいられない。
ちなみに、信康の「信」は信長からもらったものだ。
とにかく、こうした信長の極限の仕打ちに、家康は持ち前の忍耐力で耐えた。
ここで、21世紀の凡夫は思う。
家康と築山御前との夫婦仲は冷え切っていたといわれるが、それでも信長の命令で殺せるものか。
後継者として、その成長を楽しみにしていた信康はなおさらだろう。
この二人を守るために、夫として父親として、強大な織田信長に挑むべきではなかったか。
負け戦が目に見えているとしても。
理不尽な要求に耐え忍ぶといっても、とどのつまりは戦わずして尻尾を巻くだけの話ではないか。
でも、やはり、これは昭和から平成に生きている者の価値観であり、発想なのだろう。
家康は、おそらく「妻・子」と松平家(徳川家)という「家」を計りにかけた。
その結果、針は「家」の方に振れた。
先祖代々受け継いでいる「家」は、何があっても存続させねばならない、と。
歯を食いしばってでも、自分の代で断絶させてはならない。
家康に限らず、信長は家臣たちの心情と誇りをたびたび踏みにじっている。
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夢まぼろしの如く ⑩乱世のむごたらしさ
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