
平教盛(のりもり)と経盛(つねもり)の兄弟は、鎧(よろい)の上から碇(いかり)を背負い、手を取り合って海に身を投げた。
資盛(すけもり)と有盛(ありもり)の兄弟とイトコの行盛(ゆきもり)の3人は、鎧の上に碇を巻いて、手を組んで入水した。
…… 建礼門院右京大夫④永別そして隠棲
こうして、平家一門の男たちは次々に海に飛び込んだ。
★文脈上、人名を省略しませんでした。資盛以外の名前は流して下さい
ところが、どうだろう。
棟梁の宗盛と嫡男の清宗(きよむね)は、船べりに立ったまま四方を見回しているではないか。
死への恐怖に怯えているのだろうか。
平家の武士たちは、棟梁のあまりの情けなさに近くを駆け抜けるフリをして宗盛を海へ突き落とした。
それを見て、清宗は自ら飛び込んだ。
一門の他の者たちは、重い鎧の上に重い碇を背負ったり抱いたりして入水したが、宗盛父子は身ひとつである。
しかも、皮肉なことに二人とも泳ぎが達者。
『平家物語』は、宗盛は肥満だったために浮きやすかったとも書いている。
宗盛は、「清宗が沈んだら私も沈もう。清宗が助かったら私も助かろう」と思って、互いを見交わしながら泳いでいた。
そこへ伊勢義盛が舟を漕ぎ寄せて、清宗をそれから宗盛を熊手に掛けて引き上げた。
このあとも、宗盛の子孫の方々には耐えられないような意気地のない人物としての描写が続く。
宗盛の乳母子(めのとご)の藤原景経(かげつね)が、「宗盛殿を引き上げたのは何者だ」と、
義盛の舟に乗り込んで、太刀を抜いて斬りかかった。
同時に、義盛の部下が、主(あるじ)を討たせてなるものかと景経に斬りかかった。
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… … 平重盛②殿下乗合事件