中宮徳子(建礼門院)は二人の様子を見て、もはやこれまでと思ったか、硯と焼石を左右の懐にいれて海に身を投げた。
それにしても、徳子は清盛の娘で高倉天皇の中宮(皇后)、そして安徳天皇の母である。
人脈において1度は主要な役回りを演じてもよさそうな位置にいるが、『平家物語』において、いかにも影が薄い。
まるで意志が感じられないのだ。
一方、母の時子(二位尼)は、息子(重衡)可愛さに平家の置かれている状況が見えなくなって泣き崩れる平凡な母親として描かれていたが、壇ノ浦において、
平家滅亡の日に決然とした意志を見せたのである。
二位尼⑪重衡と三種の神器
源氏の兵が舟を漕ぎ寄せて、女の髪の櫛を熊手にひっ掛けて海から引き上げた。
すると、平家の女房たちが、「それは女院(徳子)にて渡らせ給ふぞ。過ち仕るな(失礼があってはなりません)」と叫んだので、兵たちは義経に願い出て、急いで御所の船に移した。
大納言典侍(だいなごんのすけ:重衡の妻)は、三種の神器の一つ八咫鏡(やたのかがみ)が安置された唐櫃を両手に抱えて海へ入ろうとした時、袴の裾を船板に射付けられて倒れたところを、源氏の兵に取り押さえられる。
★上記の場面は11/7の記事中の動画 『Antoku Becomes A Dragon (2/2)』 に出てきます
大納言典侍③今日を限りの 形見と思へば
源氏の兵たちが、八咫鏡の入った箱を開けると、たちまち目がつぶれて鼻血を出した。
生け捕りにされていた平時忠が、「それは八咫鏡だ。凡夫が見てはならぬ物だ」というと、兵たちは恐れて逃げて行った。
時忠と義経が相談して、もとのように唐櫃に紐をかけて納めた。
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二位尼(平時子)と義経(常盤の三男)には因縁浅からぬものがある。義経は、時子の亭主(清盛)の愛人(常盤:浮気ではなかったと言われている……)の子なのだ。