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平家物語の群像 義経41安徳・二位尼入水

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$吉備路残照△古代ロマン-二位尼  安徳・二位尼入水


「すぐに珍しい東男( あづまをとこ)をご覧になれますぞ」

知盛がからからと笑うと、女房たち

「こんな時に、お戯れをおっしゃるものではありません」


二位尼(にいのあま:故平清盛の妻)は、とうに覚悟していた。

喪服を2枚重ねにし長袴を着けて、三種の神器勾玉を脇に挟み、草薙の剣を腰に差して、孫の安徳天皇を抱き上げた。

「わが身は女なりとも敵の手にはかかるまじ。主上の御供に参るなり。御志思ひ給はん人々は急ぎ続き給へや」

女房たちに告げると、二位尼は静々と船べりへ歩を進めた。

安徳、8歳。

年齢より大人びていて姿も美しく、辺りが照り輝くほどである。
背中あたりまで伸びた黒髪が、美しく揺れている。

驚いた様子で、たずねた。
「どこへ行くの?」

二位尼は、ほろほろと涙を流して、

「帝は前世で行った十善・戒行によって、天皇として生まれました。しかし、悪縁に引かれて運が尽きました。

まず東を向いて伊勢神宮にお暇を申し上げ、次に西を向いて西方浄土のお迎えがあるように念仏を唱えて下さい。

この国は小さな辺境の地で、心が安らぎません。
極楽浄土という、素晴らしい所へお連れします」

安徳は涙ながらに小さな手を合わせ、東を向いて伊勢神宮に別れを告げ、それから西方を向いて念仏を唱えた。

唱え終わると、二位尼は孫を抱いたまま海に飛び込んだ。

「波の底にも都の候ふぞ」


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