梶原景季は佐々木高綱に一歩先んじて、平等院の小島ケ崎から駆け出してきた。
後れをとった高綱は、景季に声をかけた。
「梶原殿、宇治川は西国一の川ですぞ。腹帯(はらおび)がほどけています。お締めになったほうが……」
「そうか」と景季は手綱を馬のたてがみに投げかけ、左右の鐙に踏んばって立ち、腹帯を解いて結び直した。
影季が腹帯を結び直している間に、高綱は脇を駆け抜け、先に馬を川へ乗り入れた。
景季は「はばかられた」と思ったかどうか、高綱に呼びかける。
「佐々木殿、手柄を立てようとするあまり不覚を取りなさるな。川底には大綱がある」
高綱は太刀を抜いて、馬の脚に絡んでくる大綱を切りながら馬を進めた。
何といっても高綱が騎乗している「生食(いけづき)」は天下一の名馬、激流の宇治川を真っ直ぐに進み、対岸に上がった。
景季の「磨墨(するすみ)」は途中から斜めに押し流され、ずっと下流から上陸した。
日本人は決してこんな蛮行はしない。「愛国無罪」という中国の教育が間違っている。同胞がこのレベルの仕返しをしないよう祈りたい。
高綱は、鐙を踏ん張りながら立ち上がり、大音声をあげる。
「宇多天皇9代目の後胤で近江国の住人・佐々木三郎秀義の四男、佐々木四郎高綱が宇治川の先陣だ」
なお、先陣争いに勝利して先陣を切った者は、1番の功労者として莫大な恩賞と名誉を手にすることが出来る。
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