群雄割拠
自身が喪主である葬儀の日、父の位牌に思いっきり抹香を投げつけた信長は、以後おのれ一人の力で、血で血を洗う凄惨な戦乱の世を、生き抜いていかねばならない。
将来への打ち消しようのない不安と、じわじわと胸にこみあげてくる風雲の志がないまぜになって、全身全霊が打ち震えるような思いであったろう。
しかしながら、家臣や領民たちの信望は、うつけの信長よりも、貴公子然とした弟の信行にあった。
実母の土田御前さへ、奇矯な振る舞いの多い嫡男の信長を遠ざけ、信行を偏愛する。
筆頭家老の林通勝や柴田勝家も信行側へ走った。
守り役の平手政秀は、信秀の死後も、いっこうに改まらない信長の素行を戒めてか、自ら命を絶つ。
そんな絶望的な状況の中で、骨肉相争う織田家をまとめ、今川家や斎藤家など四隣の強敵を倒さねばならない。
倒さねば、自分が滅びる。
こうして、弱肉強食という非情にして残酷な戦国の世の掟が、信長の行動原理となった。
実弟の信行や主家筋の織田家をはじめ、敵対する同族を、知略や謀略によって次から次に滅ぼしていく。
しかも驚くほど早い時期に、信長には天下という観念が芽生えている。
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夢まぼろしの如く ④弱肉強食の世
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