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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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平家物語の群像 横笛④横笛歌石

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$吉備路残照△古代ロマン-横笛歌石  横笛歌石  滝口寺


横笛は、時頼に一目会いたい一心で、当時はまだ鄙びていた嵯峨にやってきた。

「時頼は往生院で修行している」とは聞いていたが、その往生院がなかなか見つからない。

歩き慣れない足を引きずるようにして、あちらを探しては休み、こちらを訪ねては佇んだ。

だいぶ経ったころ、荒れはてた僧房から念誦の声がする。

耳を澄ますと、確かに聞き慣れた時頼の声だ。

連れの女に言わせた。

「時頼様、横笛でございます。出家されたそうですが、お目にかかりたいと訪ねて参りました。」


横笛が来ている。

仏道修行中の身でありながら、一日たりとて忘れたことのない横笛が来ている。

時頼は胸が高鳴った。

障子のすきまから覗くと、すぐそこに、いかにも歩き疲れた様子の横笛が立っている。

裾は露に、袖は涙に濡れたままだ。

どんなに道心堅固な者でも、心を揺さぶられるだろう。

だが、ここで会えば元の木阿弥。

時頼は胸が張り裂ける思いで、同宿の僧に頼んだ。

「ここにはそんな人はいない。何かの間違いでは」


横笛は情なく恨めしかったが、涙をこらえて帰っていった。





横笛は想いを伝えようと、指を切った血で、大きな石に和歌をしたためた。

○ 山深み  思い入りぬる  柴の戸の

        まことの道に  我を導け


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