「幼い子供たちが私にまつわりついて離れようとしないものですから、ついつい遅れてしまいました」
「なぜ六代殿を連れてこなかったのですか。情にほだされずに、よく残してきたものですね」
「行末が心配なものですから、妻子を残してきました」
維盛は先ほどのつらい別れを思い出して、思わず涙ぐんだ。
平家一門はいったん九州へ下って勢力を立て直すと、改めて上洛の途についた。そして、四国は讃岐 (香川県) の屋島に本拠地を構え、対岸の一ノ谷に布陣した。
だが、周知のように一ノ谷の戦いで、源義経の奇襲戦法にしてやられる。
平重衡①重衡卿は生田森の副将軍
一ノ谷で討ち取られた平家一門の首が都大路を引き回され、縁故の者はみな心を痛めた。
大覚寺に隠れていた維盛の北の方 (建春門院新大納言) は、斎藤五宗貞と斎藤六宗光に変装させて見に行かせた。
文覚⑭残党狩り 六代の運命は
維盛の首はなかったが、引き回された首はみな見知っている人たちで、悲しさに耐えきれず、急いで大覚寺に戻った。
北の方が、「どうでした」と聞くと、「維盛殿の首はありませんでした。ご兄弟では、師盛殿の首だけがありました。他には、あの方、この方……」
北の方は、「とても、他人事とは思えない」とうつ伏した。
ややあって、斎藤五が涙を抑えていう。
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