美濃国主・斉藤道三
若き日の信長は、本などはとんと読まず、日がな一日、のちの前田利家など数人の家来を引き連れて、野山に馬を駆っては狩猟に精を出していた。
あたたかい季節には、日が落ちるまで、川で泳いでいる。
しかしながら、信長は、そうした闊達な遊びに夢中になりながら、たえず目と頭と勘を働かせ、先例にとらわれることなく、遊び方に工夫を凝らしている。
家来たちに竹槍で勝負をさせながら、当時の武士の常識と違って、竹槍は短いのよりも長いほうが有利なことを発見する。
鷹狩りに興じている最中にも弓、鉄砲、兵法などの訓練を怠らなかった。
ふだんの遊びが単に遊興にとどまらす、将来に備えての軍事的な訓練に結びついていたのである。
珍奇ないでたちや、世間の眉をひそめさせる度外れの振る舞いも、ただの気まぐれや物好きからではなく、形式ばかりで実質の伴わない室町的な伝統的権威に対する反逆心と、生来のあくなき合理精神と実証主義のゆえなのかもしれない。
しかも、時と場所によって、信長はみごとに自分を演じきる。
20歳のとき、舅の美濃国主・斉藤道三の求めに応じて、尾張と美濃の国ざかいに近い聖徳寺で対面することになった。
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夢まぼろしの如く ②斉藤道三との対面
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