本能寺の変
天下統一の途上、本能寺で無念の最期を遂げた織田信長は、その断末魔の中で何を思い、迫りくる炎の中に何を見ていたのだろう。
人の一生を通して、目はその人物の心の動き、また人生と社会に対する心構えを示す。
その人物が人生の目標を掲げ、創造的かつ意欲的に生きようとしているか、あるいは無気力、無感動、何らの目的もなく、ただ日常身辺の雑事の処理に取り紛れているのみか、目を見れば分かる。
内外の敵対勢力だけでなく、家臣や領民にまで、「尾張のうつけ」と呼ばれ、蔑まされていたころの信長は、いかなる目の持ち主であったのだろう。
およそ大名の子らしくない、ひどく異様で粗末な服装と、堅苦しい行儀作法などどこ吹く風といった型破りの行動とで、父の信秀と守り役の平手正秀とを悩ませながら、その目で何を見ていたのか。
実母の土田御前さえ、常識人で折り目正しい弟の信行を偏愛し、変人極まりない嫡男・信長を嫌っていた。
夫・信秀の死後、信長を廃嫡し、信行を世継ぎにしようとする勢力に積極的に加担しているほどだ。
わが息子ながら、できそこないの信長では織田家は立ち行かない、という心配もあったのだろう。
いずれにしろ、母親が実の息子を憎むとは尋常のことではない。
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夢まぼろしの如く ①尾張のうつけ
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