久々に平家の公達 (きんだち) に戻ってきた。
それも公達のなかの公達。
平家一門嫡流の美貌の貴公子、維盛 (これもり) だ。
『建礼門院右京大夫集』 の作者は、維盛の輝くような美しさを、「光源氏の再来」 と書いた。
ちなみに、右京大夫は、維盛の異母弟・資盛 (すけもり) と恋仲である。
建礼門院右京大夫③運命の人
安元2(1176)年3月4日、後白河法皇50歳の祝賀の宴で、烏帽子 (えぼし) に桜と梅の枝を挿して、「青海波 せいがいは」 を舞うと、その優美な舞い姿に、
女房たちは、「桜梅のように美しい」 とため息をついた。
それから、維盛は 「桜梅 (おうばい) の少将」 と呼ばれるようになる。
平家嫌いだった関白・九条兼実さえ、
「容顔美麗、尤も歎美するに足る」 と賛嘆している。
それにしても、『平家』 の作者は、男性の容姿については、これでもかこれでもかと色んな角度から形容するが、
女性美には関してはまるで無頓着なのはどうしたわけか。
『平家』を書いた人物は99.999%以上男なのに……。
保元3(1158)年、維盛は、平清盛の嫡男・重盛の嫡男として生まれた。
父の重盛は20歳で、祖父とともに保元・平治の乱を戦っていた頃である。
戦乱の最終勝利者となった清盛は朝廷で権勢をふるい、重盛は後継者として異例の出世を重ねていった。
維盛は、ここまでは眩いほどに恵まれた人物だ。
将来が約束されている上に、匂い立つような美形ときている。
だが、人生、いつもいい事ばかりではない。
安元3(1177)年6月、藤原成親 (なりちか) を首謀者とする鹿ケ谷の陰謀が、重盛・維盛親子に微妙な影を落とした。
鹿ヶ谷の陰謀①伏線
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