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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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平家物語の群像 葵女御②忍ぶれど 色に出でにけり 

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$吉備路残照△古代ロマン-忍ぶれど  忍ぶれど 色に出でにけり


「そこまで思いをかけておられるのなら、何の不都合がございましょう。を召されたらいかがですか。家柄を気になさる必要はありません。基房がさっそく養女にしましょう」

「基房のいうことはもっともだ。退位してからなら、それもよい。しかし、在位中に、そのようなことをしたら、後代のそしりとなろう」

基房は、仕方なく帰っていった。


ある日、高倉は手元にあった紙に、古歌を書きつけた。

○ 忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は

    物や思ふと 人の問うまで

『拾遺集』 の恋の部にある平兼盛の名歌だ。藤原定家の 『小倉百人一首』 に採られている。ご存知の方も多かろう。

  忍びの恋①玉の緒よ 絶えなば絶えね 永らえば


藤原隆房が、和歌の書かれた紙をにわたすと、葵はぽっと顔を赤らめて、懐にしまった。そして、ほどなく体調を崩したからと里へ帰り、5、6日ほど臥せたあと死んでしまった。

あっけない、まことにあっけない。物語としても、まったくの尻切れトンボだ。『平家物語』  よどうした、と言いたくなる。

これから、「高倉と葵の恋物語」 が本格的に始まるのではなかったのか。





寵愛するの思わぬ死で、高倉は日々、夜となく昼となく悲しみの淵に沈んでいた。

そんな夫を見かねた徳子から、小督  (こごう)  という女房が送られてきた。小督は、徳子に仕えている女房たちのうちの一番の美女で、比類なき琴の名手である。

徳子の寛大さには恐れ入る。これでは、年上女房というより息子を溺愛する母親ではないか。
あるいは、理想の奥さんとはこういうタイプなのだろうか。

どうやら、「高倉と葵」 は、「高倉と小督の恋物語」へのプロローグだったようだ。
 


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