文覚上人荒行 萩原守衛 碌山
四位の侍従・盛定が、和琴をかき鳴らして今様を歌った。
御所のそこかしこまで賑やかになり座が盛り上がって、後白河法皇も上の句を受けて下の句を続ける。
そこに文覚がわめきながら現れたので、御遊が台無しになってしまった。
法皇が、「こいつ何者だ、狼藉である。素っ首を突け」と命じると、さっそく現われた血気盛んな男たちの中から、判官の平資行が進み出ていった。
「お前、何をわめいている。院の命令だ。すぐに出ていけ」
「高雄の神護寺へ荘園を一か所寄進するまでは出ていかぬ」
資行が近寄って首を突こうとすると、文覚は勧進帳を持ち直して資行の烏帽子をはたと叩いて打ち落とし、拳を強く握ると胸をどんと突いて、仰向けに突き倒した。
資行は、あわてて逃げて行った。
文覚は懐から馬の尾で柄を巻いた冷たく光る刀を抜いて、近寄る者を突こうと身構えた。
左手に勧進帳、右手に刀を持って立ち回ったが、左右の手に刀を持っているように見えたという。
公卿も殿上人も騒ぎだして、御遊どころではなくなった。
そうこうするうち、文覚より腕の立つ戦いのプロがやってきた。
文覚ももとは遠藤盛遠という北面の武士だが、よんどころない事情で、仏道修行に入って久しい。
文覚③袈裟御前は「貞女の鑑」 参照
信濃国の者で安藤右宗という武者所の武士が、「何事だ」と太刀を抜いて駆け込んできた。文覚は獲物がきたとばかりに飛びかかるが、安藤武者のほうが一枚上手だった。
余裕がある。
ここで斬ってはまずいと思って、太刀を握り直すと、文覚の刀を持った方の腕をしたたかに打ちすえ、文覚がひるむと、「やったぞ~」と太刀を捨てて組みついた。
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平家物語の群像 文覚⑨神護寺へ荘園を寄進くだされ
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