神護寺薬師如来立像 (国宝)
再び地獄の火穴に落ちて、苦界を輪廻 (りんね:いろんな動物の姿で生まれ変わる) することは、何とも痛ましいことよ。
釈迦牟尼の説かれた教えの一つひとつが、悟りの根本原理を説き明かしている。ゆえに、仏の縁に従い、釈迦の説かれた教えを守るならば、悟りの境地に到らぬことはない。
文覚は無常のこの世に涙を落として、貴賤道俗を問わず誘い、九品往生 (極楽浄土に往生する者に9等級がある) の上品の蓮台と縁を結び、仏の霊場を建立したい。
高雄は、山が高くて鷲峰山の梢が眺められ、谷は静まりかえって商山洞の苔を敷き詰めているようだ。岩走る水は布を引くがごとく、峯々では猿たちが枝々を飛び回って鳴いている。
人里からは遠く離れ、俗世の塵もない。修行を邪魔立てするようなものはなく、信仰のみ。
地形はきわめて優れ、諸仏を崇めるににふさわしい。
しかるに、寄進はまだ僅か。
砂を集めて仏塔とするような些細な功徳でも仏の機縁を感じる、と聞く。まして、わずかな額でも寄進して頂けたら、仏の功徳が高いことはいうまでもない。
神護寺の建立が成就して、天皇の御代が安泰で、人々が尭舜の世のごとき安寧を謳歌することを願う。
精霊の魂は死の前後や身分にかかわらず、すみやかに真実の浄土に至らんことを。
勧進修行の趣は、この通りである。
治承3(1179年)年 3月日(さんがつのひ) 文覚
その頃、後白河法皇の御前では太政大臣藤原師長が琵琶を奏で、和漢朗詠集などの詩歌をみごとに朗詠し、按察大納言資方は6絃の和琴を鳴らし、風俗歌や催馬楽を歌っていた。
(原文) 折節御前には妙音院太政大臣御琵琶遊ばし朗詠めでたうせさせおはします。按察使大納言資方卿拍子取つて風俗・催馬楽(さいばら)歌はる。
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平家物語の群像 文覚⑧勧進修行の趣かくの如し
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