若いときに恋に狂った破天荒な怪僧いや高僧、文覚 (もんがく) 上人の俗名は、遠藤盛遠 (もりとお)。
盛遠は、渡辺党出身の北面の武士であった。
渡辺党とは摂津源氏の郎等で、ほかに源頼政に仕えた「王城一のイケメン」源 (渡辺) 競 (きおう)らがいる。
北面の武士は院御所の北面 (北側の部屋) の下に詰め、上皇や法皇の身辺を警衛したり、御幸に供奉したりした武士。
11世紀末に、白河法皇が創設した。
院の直属軍として、主に寺社の強訴 (ごうそ) を防ぐために動員された。
北面の武士出身者には、有名どころでは平清盛や源義朝、佐藤義清 (のりきよ のちの西行法師) 、そして袈裟の夫である源 (渡辺) 渡らがいる。
盛遠は、鳥羽天皇の皇女統子 (むねこ) 内親王(上西門院)に仕えていたが、19歳で出家、文覚を名乗った。
『平家物語』は、盛遠が出家した理由をそっけなく、「ある事情で」としか書いていない。
本筋と離れた逸話には、あまり関心がないようだ。
盛遠と袈裟御前とのエピソードは、弟分の『源平盛衰記』 (平家物語の異本) に詳しい。
『源平盛衰記』によると、波乱の人生を歩んだ文覚の出家の動機について、次のような話が伝わっている。
袈裟(本名:あとま)という、美しい女性がいた。
地獄門 原作:菊池寛 『袈裟の良人 (夫)』
・第7回カンヌ国際映画祭 (仏) グランプリ (パルムドール) 受賞
・第27回アカデミー賞 (米) 最優秀外国語映画賞&衣装デザイン賞
・監督と脚本:衣笠貞之助
・盛遠:長谷川一夫 袈裟:京マチ子 渡:山形勲
盛遠と袈裟とは従兄妹同士で、子供のころはよく一緒に遊んでいた仲である。
盛遠は、「大きくなったら、あとまちゃんをお嫁さんにしよう。」と秘かに心に決めていた。
北面の武士になってしばらく顔を見ていなかったが、淀川に架かる渡辺橋の橋供養の日に、ばったり袈裟と再会した。
気品のある、おとなの女性に成長している。
ところが、思いもかけなかったことに、北面の武士の同僚である渡辺渡 (わたる) の妻になっていた。
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