源氏物語名場面56
玉鬘 拾壱
石清水八幡宮/男山八幡宮
「仁和寺にある法師、年寄るまで、
石淸水を拝まざりければ、心うく覚えて、
ある時思ひ立ちて、たゞ一人、徒歩よりまうでけり。
― ― ―
何事にも、先達はあらまほしき事なり」
吉田兼好『徒然草』
◆
石清水八幡宮
平安時代前期に
八幡宮総本社の【宇佐神宮】
(大分・宇佐市)から勧請された神社。
京都盆地南西の
男山(鳩ヶ峰 標高143m)山上に鎮座。
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乳母は長男の豊後介に
都に上った所期の目的を思い起こさせた。
行方不明だった玉鬘の母*夕顔を探すことと、
玉鬘を父内大臣に会わせることである。
☆
*夕顔は
乳母が4歳の玉鬘の手を引いて太宰府へ
下向したときは既に亡くなっていた。
■
乳母、豊後介に
「この近くに《石清水八幡宮》があります。
筑紫にいた頃
姫君がよく参詣しておられた
《鏡神社》や《筥崎宮》と同じ系統のお社です。
肥前国を離れるときも
姫君は《鏡神社》に願を掛けて祈られました。
お蔭で私たちは
神仏の御加護をえて無事に帰京できたのです。
さっそく、お礼参りに出かけましょう」
翌日、
男山山上の《岩清水八幡宮》に詣でた。
■
それから数日後、
「【長谷寺】の『観世音菩薩』は
霊験新たかなことで名高い仏様です。
姫君には大きな御利益があることでしょう」
乳母の発案で
初瀬の【長谷寺】に詣でることにしたが
初瀬は遠い。
ふだん身体を動かすことのない
玉鬘は歩き始めるとすぐに息が上がった。
乳母や豊後介たちに励まされ
美しい顔に汗水を垂らしながら足を運ぶ。